一般的なスキンケアでは洗顔と保湿がセットになっており、どちらも美肌の維持には欠かせないスキンケア方法として広く知られています。ところが、酒さや酒さ様皮膚炎となると「逆に保湿などしない方が改善する」という保湿から脱却した「脱保湿」という意見が取りざたされます。
正しいスキンケア方法としては保湿が大前提であるのに対し、酒さ様だと脱保湿という観点が現れてくるのはどうしてでしょうか。このヒントは酒さ様皮膚炎を発症しているときの肌の仕組みを見てみると分かるかもしれません。今日は酒さ様皮膚炎にとっての保湿、脱保湿について考えていきたいと思います。
もくじ
酒さ様皮膚炎の肌
まずは酒さ様皮膚炎の肌状態についておさらいします。一口に酒さ用皮膚炎と言っても発症直後と何週間か経過した後では症状が全く違います。ものすごーく大ざっぱに分類すると
- 炎症期
- 乾燥期
- 小康期
でしょうか。
炎症期
発症直後は酒さの症状に加え、ステロイドの離脱症状が重なるため目も当てられない程の炎症を起こします。
乾燥期
そこから炎症が治まってくると今度は乾燥が目立つようになり、一大乾燥期が始まります。皮むけバリバリの時期ですね。
小康期
皮剥けもある程度おさまり、発症直後の炎症も治まってきても顔の赤みはなかなか取れません。炎症期や皮むけ期のような目に見える大幅な病変はなくなるものの、顔の赤みが取れるまではかなりの年月が必要となります。
人によっては小康状態になったと思ったらまた炎症や皮むけを再発する、いわゆる「リバウンド」を繰り返す人もいます。
このように、一口に酒さ様皮膚炎と言っても長い経過をたどって治ってゆく病気なので、その時々によって症状は様々なのです。
症状の違いによる適切なアプローチ法
時期によって症状が違うということは当然肌に対するアプローチも違ってきます。この辺りに酒さ様皮膚炎の治療過程において保湿、脱保湿の意見が分かれる理由がありそうです。
酒さ様皮膚炎に共通すること
肌状態
さらに酒さ様皮膚炎の肌ではその他の正常な肌とは異なる特徴があります。以下に挙げる特徴は、酒さ様皮膚炎であるからにはどの時期であっても共通です。
- 皮膚が薄くなっている
- 炎症を起こしている
- 血管が拡張している
炎症と血管には密接な関係がありますので1項目でもいいかもしれませんが、ここではあえて項目を分けました。
小康期にいる方は「え、炎症?治まったよ。」と思う人も多いのですが、ここがまず勘違いの一つ。「赤ら顔」が残っているという事は皮膚の下の血管が拡張して赤みが増しているという事です。発症直後の火傷をしたような炎症だけが炎症ではありません。血管が拡張して赤みが増しているというのは軽度とは言え炎症の一部なのです。
そして、薄くなった皮膚が顔の赤みを増長させます。少々の血管拡張でも通常の肌では赤く見えませんが、肌が薄いためにちょっと炎症を起こすとすぐ赤くなっちゃうんですね。
この辺がどの期間にも共通する酒さ様皮膚炎の特長となります。
改善法
こういった特徴がある為、酒さ様皮膚炎の肌ではむやみに触らないことやこすらないことが推奨されます。触ったりこすったりする事によって薄くなった肌のバリア層がさらに破壊され、肌が厚くなる暇がなくなるからです。
「こする」の定義も普通よりシビアです。普通に乳液を塗ったりお薬を塗ったりする行為ですが、肌に何かを塗るという行為は肌をこすっている事と同じと言えます。
普通の肌であればこの程度は「刺激」となりませんが、酒さ様の肌は違います。この程度で「刺激」になってしまうのです。この辺りの事から「酒さ様の治療には何もするな。」とか「酒さ様皮膚炎には水洗顔がいい。」という意見が生まれます。
酒さ様皮膚炎と脱保湿
脱保湿の考え方
さて、肝心の脱保湿についてですが、
何もしない方がいいくらいなんだから、保湿もしちゃダメでしょ。
という考え方を推し進めたのが脱保湿です。
実際に脱保湿によって肌状態が改善されている方もたくさんいます。これは何もしない事によって肌本来の働きが戻り、保湿による改善よりも「何もしない」事による改善が上回った結果です。
いわゆる角質培養の考え方ですね。酒さ様皮膚炎と角質培養の考え方は非常に相性がいいので、脱保湿に関しても一定の効果が得られます。
保湿の血行促進効果
さらに、保湿には血行を促進する効果があります。血行を促進することは通常であればいい事です。血のめぐりを良くすることによって分泌物が体内に循環するため、老廃物の排出を助け、傷の治りが早くなったります。こう聞くとどんどん促進したいと思ってしまいがちですが、実はここに一つ落とし穴があります。
血行促進作用が皮膚に与える影響の一つとして「皮膚温度が上昇する」というものがあります。血の巡りが良くなるわけですからポカポカしますね。それに伴って皮膚の温度も上がるのですが、これが酒さ様には致命的に良くないのです。
皮膚の温度が上がることによって熱がこもり、かえって炎症が促進される
これが保湿で酒さよう皮膚炎が悪化する場合の仕組みです。
温度変化を嫌う酒さ
全米酒さ協会がまとめた酒さの悪化因子リストでも温度変化はリストアップされており、サウナや熱いお風呂は避けるように注意喚起が行われています。
また、暑さは75%の人の悪化原因となるらしいですが、これはアルコールの悪影響を受ける人の数値(52%)よりも高いです。
酒さ様皮膚炎と保湿
では、酒さ様皮膚炎には保湿は絶対に良くないのでしょうか。
まず最初に結論を言ってしまうと、絶対なんて事はありません。
脱保湿をするべき時と保湿をするべき時
先ほど挙げたように、保湿で酒さ様が悪化する場合は
- 保湿による刺激(こすっちゃう)
- 血行促進作用による加熱(熱がこもる)
のどちらか、または両方が悪さをしています。この悪化因子が
悪化 > 改善
になってしまう時は脱保湿の方が肌が改善します。
そうでない場合は、やはり一般的な説と同様きちんとしたスキンケアによる保湿をした方が肌の改善が進むと言えます。
保湿で肌が改善した方もいらっしゃいますし、中には保湿を上手に使ったことで人より早い回復をしている方もいらっしゃいます。
保湿剤の選び方や肌質による違いによる悪影響
但しここにも落とし穴があります。いくら保湿剤を使ってスキンケアをした方がいいからと言っても、自分の肌に合った保湿剤を選ばないと逆効果になってしまいます。
酒さ様皮膚炎の肌はプラスの影響を受けにくく、マイナスの影響はとてもとても受けやすい状態です。
こういった状態の肌で「悪影響を及ぼさない保湿剤」を探すのは困難を極めます。欲を言えば悪影響を及ぼさないどころか「状態を改善してくれる保湿剤」が欲しいのですから、これはもう至難のわざといえます。
化粧水や乳液などの保湿剤で肌が劇的に改善したという方は、この至難の業を乗り越えて肌状態にぴったり合った商品に巡り会うことができた方です。
実際は劇的に改善する商品に巡り合うよりも、悪化する商品か悪化しないまでも改善はしない商品にたどり着いてしまう可能性の方が高いです。
肌状態が普通に戻れば戻るほど「至難」というほど難しいことではなくなってきますので、スキンケア商品をあれこれと試すのは肌状態が改善してからの方が無難です。
肌状態が改善してきたら手作り化粧水や敏感肌用の低刺激化粧水、赤ら顔用化粧水などから試していくといいかかと思います。
脱保湿に行き付く理由
まずは保湿すらできない肌状態。保湿ができる肌状態になっても、保湿剤の成分による悪影響を受けやすい過敏な肌。
酒さよう皮膚炎の肌では、保湿ができるまでのハードルが高すぎます。
上記のような理由の他に、時期による肌状態の変化も保湿と脱保湿のどちらがいいかと決められない理由があります。
冒頭で酒さ様皮膚炎の症状は時期によって違うとお話させて頂きましたが、炎症期と乾燥期では保湿に対しての抵抗度も違います。
同じ人でも症状によって炎症期には脱保湿、乾燥期には保湿、といったように保湿したほうがいいかどうかが違います。
乾燥期にだって肌の奥では炎症が起こっているのですから、保湿による悪影響を受ける可能性もあります。これを一概にこの時期はこれ、と決め付けようとすると乾燥初期は保湿がダメだけど後期なら保湿を受け付ける、などともはや分類の意味がない状態になります。
こういった事から、酒さ様皮膚炎では「脱保湿」という考え方に行き着きやすいです。脱保湿の方が結果的に楽に肌改善ができるからです。
まとめ
保湿にも脱保湿にもそれぞれの利点がありますが、酒さ様皮膚炎の肌は保湿によるメリットを受けにくく、デメリットを受けやすい肌と言えますね。
メリットとデメリットを比べると
デメリット >>>>>>>>>>> メリット
くらいになってしまうと思います。自分に合った保湿剤が見つかればそれをどんどん利用していくといいですが、そうでない場合も悲観的になる事はありません。合わない方が圧倒的に確率が高いのですから。
保湿でも脱保湿でも、自分の肌状態に合わせて無理をせずに取り入れていける事が一番良い結果を生むと思います。
ちなみに私は現在小康期。逆パンダの境目が目立たなくなってきた状態ですが、どういう訳か脱保湿でぐんぐん肌が改善してます。ちょっと前の乾燥期には保湿してました。どうしてこういう保湿法になったのか興味がある方がいるかもしれませんし、近々肌状態載せた方がいいですかね。自分の肌写真で見るの、コワイ・・・。
保湿をするなら顔の赤みに注目した化粧水を試してみるのがお勧め。