美容法の一種で角質培養という考え方があります。角質培養を一言で表すと「肌を放置する事」なのですが、実はこの考え方が酒さよう皮膚炎の改善にぴったりの考え方です。
酒さよう皮膚炎を発症してしまうとあまりの悪化具合にあれこれとスキンケアをしたくなりますが、それは却って改善を遠ざける事が多くあります。特に酒さ様皮膚炎発症直後の肌は傷だらけで赤ちゃんの肌よりデリケート。こういった状態の肌には洗顔や保湿などのお手入れが却ってダメージになるのです。
こういった時に頼りになるのが「角質培養」という考え方。触らない、こすらないという事を実践しつつ弱った角質層を大切に守り、肌本来の力を取り戻します。この触らない、こすらないという観点は酒さ様皮膚炎の治療にとても大事な観点です。
今回はこの角質培養に焦点を当て、酒さよう皮膚炎の治療にどう取り入れていくのがいいかを考えてみたいと思います。
もくじ
角質培養とは
角質培養の基本的な考え方は「何もしない」ことです。本来はお手入れのしすぎで薄くなってしまった肌に対するアプローチとして、角質層を健全な状態に戻すために用いられます。肌に刺激を与える行為を一切やめて、角質や低下したバリア機能が正常に戻るのを待ちます。毛穴パックやピーリングのし過ぎなどによるビニール肌にはかなりの効果が期待できます。
今まで人工的に落としていた角質を落とさずに放置するため、角質培養開始直後では垢のようなものが顔にくっつき取れない事があります。これを取ってしまうと角質培養の考え方に反するのですが、見た目が非常に悪いので挫折してしまう方も多いようです。
角質培養の方法
角質培養の方法の基本は「何もしない」事です。具体的な方法としては
- 洗顔は水洗顔にとどめ、クレンジングはしない。
- 化粧はなるべくせず、しなければいけない時も石けんで落ちるもののみを使用
- 保湿はしない。どうしてもという時だけワセリンのみ
といったもので、とにかくシンプルなスキンケアを目指します。今までの洗顔法やスキンケア法を根底から覆す方法で
- W洗顔 → クレンジングは必要ない
- 石けん洗顔 → 汚れていなければ水洗顔で十分
- とにかく汚れを落とします → 皮脂や汚れは一定以上落ちなくていい
- 肌に水分を与える → 正常な肌は自ら潤う
- 角質層に浸透 → バリア機能を低下させているだけ
- ピーリングで余分な角質を・・・ → 余分な角質は自然にはがれる
といったように、当たり前だと思っているスキンケア方法を全て否定して本当に何もしない事を目指します。方法は理解できてもいきなり何もかも止めるのは難しいと思いますので、手始めとしてはW洗顔やゴシゴシ洗い、スクラブ剤やピーリング、合成界面活性剤を止めることから始めるといいかもしれません。
美容の為の角質培養であれば徐々に止めていくのも手ですが、酒さよう皮膚炎改善の為に始めるのであればそもそもスクラブ剤やゴシゴシ洗いはもっての他です。クレンジングに多く含まれる界面活性剤は角質培養を考えなくても避けるべき物質ですし、化粧などもしないかごく薄いものにするべきです。症状がひどい時ほど「何もしない」という角質培養の考え方で改善が促されやすいため、酒さ様皮膚炎の改善を目的とすると角質培養の考え方と非常に良く似た考え方になります。
酒さ様皮膚炎と角質培養
角質培養は薄くなってしまった肌に最も効果を発揮しますが、酒さ様皮膚炎の肌はこの「薄くなってしまった」状態です。ステロイドの副作用には皮膚萎縮がありますが、この「皮膚萎縮」というのはそもそも皮膚が薄くなる状態です。ターンオーバーも異常に早くなり、正常な肌であれば28日周期と言われるターンオーバーも数日で行われてしまうほど皮膚が薄くなります。ターンオーバーが異常に早いのは炎症期よりも皮むけ期に実感するかと思います。この期間を一言で表すと脱皮の繰り返しです。
また、酒さよう皮膚炎を発症すると炎症や膿、ニキビ状発疹などが現れますが、この状態の肌は細かい傷がたくさんある状態です。下手なお手入れは症状を悪化させるだけのため、何もしないほうが却って症状が改善するのです。
こういった事から酒さよう皮膚炎の改善と角質培養の考え方は非常に相性が良く、特に発症直後は積極的に取り入れていきたい観点です。
角質培養の取り入れ方
酒さよう皮膚炎で角質培養と最も相性がいいのは発症直後の炎症期です。この期間は炎症だけでなく膿やリンパ液、ニキビ状丘疹など様々なトラブルに見舞われ最も辛い時期です。この時期は酒さ様治療中でも最もひどい状態で、何かのお手入れができる状態ではありません。
スキンケアが何もできないので結果的に角質培養になるのですが、「何もできない」と考えるのと「あえて何もしない」と考えるのとではやはり肌への扱いに差が出ます。
角質培養の考え方を上手に取り入れると、洗顔時の指使いや顔を拭くときのタオルの使い方、お風呂の入り方やシャワーの浴び方まで変わってきます。私が酒さよう皮膚炎改善の為に取り入れた色々なもの(スキンケアや薬、サプリや食生活などなど)の中でも角質培養の考え方はトップクラスで役立ったと思います。
細かな取り入れ方を書いていくとキリがないのですが、まずは以下の考え方を徹底すると良いように思います。
- 触らない(洗顔時でも指すら触れない)
- こすらない(タオルで拭くのはNG、押し当てて水分を吸い取る)
- 皮脂や汚れが残っても気にしない
- 保湿も化粧も最低限(できればしない)
- 紫外線対策は物理ガードから
角質培養からの卒業
角質培養自体には卒業という考え方はありません。このお手入れ方法をずっと続ける事が理想の美容法とする考え方だからです。この考え方自体は酒さ様皮膚炎の改善だけに限らず、肌本来の力を引き出すとても素晴らしい考え方です。スキンケアに上手に取り入れていく事によって肌が丈夫になりますので、元の皮膚疾患の改善にも繋がります。
だからと言って角質培養にこだわり過ぎてしまう必要はありません。角質培養が合う人はそのまま継続すればいいですし、角質培養の不満点がある場合は症状の改善と共にお手入れをステップアップさせていけばいいのです。
私の酒さよう皮膚炎も最初は角質培養しか手段がなかったのですが、改善と共に他のスキンケアも取り入れていけるようになりました。今では必要があれば保湿もしますし化粧もしますが、角質培養を完全に卒業したわけではありません。触らない、こすらないなどの注意点は守っていますし、自分の肌状態からマイナスになると判断してピーリングは行いません。
まとめ
酒さ様皮膚炎治療に角質培養は最適解になりやすいスキンケア方法である事は確かです。但し酒さよう皮膚炎の改善が進み肌が丈夫になってくると、本来の肌トラブルに悩まされ始めます。酒さ様皮膚炎を発症する方は元々何らかの皮膚疾患を抱えていますが、酒さ様皮膚炎が治ったからと言って元の皮膚トラブルが治るとは限りません。
脂漏性皮膚炎の方などは洗顔をきちんとした方がいいですし、ニキビ肌の場合は原因によってピーリングなども視野に入るでしょう。こういった全ての肌トラブルも角質培養ですぐに改善するとは限りません。角質培養を行うことによって強い肌、トラブルの起こりにくい肌にしていくのが理想ですが、それには酒さ様皮膚炎の治療と同じくらい長期的に取り組まなければいけません。
時には顔にくっついているふやけた皮を取りたい時もあるでしょうし、洗顔をしないと皮脂が出すぎて日中過ごせない場合もあるでしょう。毛穴に詰まったニキビへの最適なアプローチがピーリングという時もあるでしょうし、石けんで落ちる化粧ばっかりじゃつまんないという考え方だって分かります。
角質培養は酒さよう皮膚炎治療中にはとても頼りになる考え方ですし、私自身も肌自体が強くなったようで本来の肌トラブルである大人ニキビができにくくなりました。永遠に角質培養でなければいけないという事もありませんし、角質培養にだってゆるーくやっていく方法はいくらでもあります。上手に取り入れて肌の改善を促す事ができればいいですよね。