今回はコメントを頂いた「酒さと目の炎症」についてです!
酒さ様皮膚炎というと肌の症状ばかりに目がいきがちですが、実は肌の炎症以外にも結膜炎や眼瞼炎(がんけんえん)というような目の異常を併発する事もあるようです。多くの場合は軽度で済みますが、時には目が真っ赤に充血してしまう事も。
肌の症状があまりにも壮絶な事と目は幸いにも軽症の場合が多いことから、酒さと目の炎症についての関係はあまり語られていません。私自身も振り返ってみると原因不明の落涙があったにも関わらず見逃していたという経験があります。今回は酒さ様皮膚炎と目の炎症についてちょっと考えていきたいと思います。
もくじ
4つめの酒さ型
酒さは3つに分類される事が多く、専門用語を避けて分かりやすくすると
- 赤ら顔
- ニキビ状のブツブツ
- 鼻の肥大化と変形
といった分類が用いられます。
患者さんはこのタイプうち1つまたは複数を同時に発症しています。また、この3つに関しては進行性のものと考えられています。進行性とは1~3に向かって重症化していくという訳ではなく、個々の症状が進行していくという事です。つまり、赤ら顔とニキビ状発疹を併発し放っておくとどちらもひどくなっていく、という事が起こります。
この分類方法ですが、酒さの本場アメリカで実は4つに分類されています。1~3まではそのままですが、4つ目のタイプとして
Eye Irritation (Ocular Rosacea)
というものが挙げられています。翻訳すると「眼の異常(眼型酒さ)」です。
いつも(勝手に)お世話になっている全米酒さ協会のホームページからスクリーンショットをお借りしました。「Rosacea」というのが英語で酒さのことです。
目型酒さの症状
眼型酒さの症状には
- ドライアイ
- 涙目
- 結膜炎
- 角膜炎
- 充血
- 眼瞼炎(がんけんえん:まぶたの周囲の炎症)
- 眼囲の紅斑(目の周りが赤みを帯びること)
などがあります。酒さ様皮膚炎と同様、炎症と乾燥関連が多いですね。
また、酒さの分類として眼型と分類されていますが酒さ患者が発症しやすいタイプとして分類されているだけであって、「眼型酒さ」として皮膚科で治療が行われるわけではありません。これらは実際には結膜炎や角膜炎など眼の病気であり、治療は眼科の領域となります。
酒さ様皮膚炎と眼の異常がダブルで発症すると、眼の方は眼科にお世話になるしかありません。皮膚科も眼科もという受診になり非常に負担がかかります。
眼型酒さに関しては軽度の方が多いとは言え、それは重症化しないということではありません。軽症のうちはいいですが、結膜炎などは視力への後遺症もある病気です。ひどくならないうちにきちんと眼科を受診するようにして下さい。
眼科を受診するつもりがなくても、軽症のうちからかかりつけの皮膚科医に伝えておくのも大事です。万が一ひどくなった時にも対応してもらいやすくなりますし、眼科のお医者さまを紹介して頂ければ、紹介状などで酒さや酒さ様皮膚炎である事やその症状が眼科医にきちんと伝わります。
日本での眼型酒さ診察事情
患者側が自分で気付き、皮膚科医に伝えたり眼科を受診したりなどのアプローチが行える場合はいいのですが、問題はそうでない場合です。
そもそも日本では「酒さ」という診断がつくことが少なく、大抵はニキビや脂漏性皮膚炎、アトピーやアレルギーなどと診断されます。酒さ様皮膚炎の場合はステロイドが原因のため酒さに比べると診断がつきやすいようですが、症状が同じとされる酒さの治療自体が積極的に行われていません。
また、多くの場合は皮膚科での診察となるため、眼の異常に関しては取り上げられることなく終わることが多いです。皮膚科医も積極的に眼の異常を診断したくはないようで、酒さや酒さ様皮膚炎の診断に当たって眼の異常があるかどうかの問診をされるお医者さまはほとんどいらっしゃいません。
眼型酒さ体験談
私にも原因不明の落涙がありましたが、診察で眼に関することを聞かれたことは一切ありませんでした。私の場合は充血などは気付かなかったのですが、横になると勝手に涙が流れることが多くありました。下になっている方の目から流れるんですが、頬の赤みがひどい方の目から流れる頻度が高かったです。
この落涙の症状は酒さ様発症あたりから始まり、皮剥け期間が終わる頃に治まるという経過を辿っています。今では横になっても涙が流れることはありませんので、恐らく眼型酒さの症状も引き起こしていたんだと思います。
眼の充血に気付かなかった事と外出したくなかった事から当時は眼科の診察を受けませんでしたが、眼科を受診したとしても酒さ様と関連付けてくれたとは思えません。
酒さに知識のある眼科医もいらっしゃるとは思いますが、皮膚科医でさえ研究段階にある酒さの知識を眼科医に求めるのは酷です。眼の炎症の治療という事ならステロイドの目薬が処方されますので、酒さ様の場合の扱いにも困りますしね。
お医者さまだって専門外の治療は行いたくないでしょうし目と皮膚じゃあ随分と違いますので、皮膚のことは皮膚科で・・・・と言われ、眼の事は眼科で・・・・と言われるのが落ちだと思います。(皮膚科と産婦人科で散々経験済みです)
専門外の診断に対する日本と米国の違い
専門外の診断を行いたくない気持ちは素人の私でも良く分かりますのでお医者さまばかりを責める事はできません。制度にも問題があると思います。現在でも様々な皮膚疾患の情報を発信されている「そが皮膚科」のホームページでは
米国では診断指針では皮膚科専門医以外でも診断できるように簡略化、単純化されスコア化がされているそうです。
引用:そが皮膚科 – 酒さ
といった記述がありました。上記のページは酒さに関しても詳しく記載されている上にお医者様のホームページなので参考になる情報がたくさんあります。
この記述を見ると、アメリカでは専門医以外でも酒さの診断ができるようマニュアル的なものがあるみたいですね。こういったマニュアルがある事によって、皮膚科医以外が酒さの初期診断ができたり、皮膚科医が眼型酒さの初期診断がしやすくなったりします。
酒さの分類方法や問診すら行われない診察事情を見ても、日本の皮膚科では積極的に眼型酒さの治療を行いたくないという事情が透けて見えます。詳細な診断や実際の治療は眼科医に任せる事になるとしても、初期診断ができるかどうかというのは大きな違いではないでしょうか。
日本でもこういった指針を積極的に取り入れ、皮膚科医でもある程度の診断ができるようマニュアル化などが進むべきです。そうでなければ犠牲になるのは私たち患者です。マニュアル化されているかそうでないかと言うのはやはり大きな違いです。日本でも酒さの治療が積極的に行われるようになればこういったマニュアルなども整備されるかもしれませんが、現在はそこまでではないようです。日本では発症者が少ない事も研究が進まない原因でもありますが、少しでも研究が進んで体制が整うことを願うばかりです。
まとめ
酒さと目の異常に関しては自分があまり深い体験をしていないので、知識として知っている程度のものでした。調べ方も浅かったのですが、改めて調べてみると酒さと眼の充血や炎症などで悩んでいる方も多くいるようです。
私は元々眼が強い(?)タイプですので、ドライアイなどで悩む事もなく目薬や眼鏡とは無縁の生活を送っております。そのおかげで落涙程度ですんだのかもしれません。原因不明の落涙も恐らくは眼の炎症から起こるものだとは思いますが、充血して真っ赤になるという自覚がなかったので軽度だったのでしょう。
ドライアイになりやすいタイプの人や元々眼が弱い人の方が、眼に関しての影響も受けやすいのではないかと思います。いずれにせよひどくなってきたらきちんとお医者さまにはかかるようにしましょうね。
今回はコメントを頂いた事によって眼の異常についてより調べるきっかけとなりました。自分ひとりでは気付けなかった視点が持てましたので、非常に感謝しております。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
コメント
ろーざ様。
早速、記事読ませていただきました!
こんなに詳しく調べていただき、ありがとうございます。
現在、お風呂あがりには充血が目立ちますが市販の抗菌剤目薬をさして症状も軽減してきました。元々ドライアイなので症状が出やすかったんですね!
つうさん
いつもコメントありがとうございます!
自分自身と他の方の症例などを読む中で、元々眼の弱い人の方が症状が出やすそうだなぁと推測しただけで専門家の意見という訳ではないのです。お恥ずかしい限り。。。
この記事が少しでもお役に立てたなら幸いです。
眼の充血も軽減されたようでほっと一息ですね。恐らく炎症を起こしやすくなっていると思いますので注意してあげて下さい。
皮膚の方もさっさと治ってくれればいいんですが、根気が必要なのでお互いがんばりましょう!