酒さや酒さ様皮膚炎では、ある種の食品を避けた方が良いとされています。
アルコールやカフェインなど、明らかに身体に悪いと思われるものの他、一見すると身体に良さそうと思われるものも避けるべき食品と指定されていたりして、一体どれを避けたらいいのか分かりづらいかと思います。
今回は全米酒さ協会さんが挙げる、酒さの悪化要因となる食品リストを少し掘り下げて見ていきます。
もくじ
酒さが悪化しやすい食品
酒さの悪化要因に関しては以前に記事にしていますので、そちらも参考にして下さい。
酒さで避けるべき食べ物リスト
まず、酒さが悪化しやすい食べ物や飲み物にはどのようなものがあるのでしょうか。全米酒さ協会によると、酒さの悪化要因となる食品は以下のようなものです。
全米酒さ協会のリストは具体的な食品例が多いのでまずはざっくりと分類すると
- レバー
- 脂肪分の高い乳製品
- 醤油などの発酵食品
- カカオ製品
- 酢を含む食品
- 一部の豆類
- 一部の香辛料
- 一部の野菜
- 一部の果物
といったものになります。具体的には以下のようなリストアップがされています。
- レバー
- ヨーグルト
- サワークリーム
- チーズ(カッテージチーズを除く)
- チョコレート
- バニラ
- しょうゆ
- 酵母エキス(パンは大丈夫)
- お酢
- ナス
- アボカド
- ほうれん草
- そら豆やさやえんどう、インゲン豆
- トマト
- 柑橘類
- バナナ
- 赤プラム
- レーズン
- いちじく
- スパイシーかつ熱い食べ物
- ヒスタミンの高い食品
酒さで避けるべき飲み物リスト
飲み物に関しては以下のようなものが挙げられています。
- アルコール
- 温かい飲み物
- カフェイン
アルコールに関しては注意書きでさらに細かく分類されており、以下のようなものが特に酒さを悪化させるようです。ワインにはわざわざ赤ワインとの注釈がついていますが、白ワインなら飲んでもいいという事ではありません。
- 赤ワイン
- ビール
- バーボン
- ジン
- ウォッカ
- シャンパン
温かい飲み物に関しても細分化されており、以下のようなものが挙げられています。
- ホットサイダー
- ホットチョコレート
- コーヒー
- 紅茶
カフェインは厳密に言うと飲み物の項目ではなく、健康状態としてカフェイン依存症が挙げられていますが、ここでは飲み物に含んだ方が分かりやすいのであえて入れています。
酒さが悪化する食品の共通点
酒さが悪化しやすい食品リストを長々と挙げてみましたが、いちいち覚えられないですよね。
アルコールやカフェインなど、明らかに身体に悪そうなもの以外にチーズやヨーグルトなどの乳製品や醤油などの発酵食品、柑橘系の果物や豆類など、身体に良さそうなものも挙げられています。
これらの食品群、実はちょっとした共通点があります。
- アレルギー反応を起こしやすい食材
- 仮性アレルゲンを多く含む
大豆やほうれん草、トマトやバナナなど、実はアレルギーを引き起こしやすい食品です。
また、仮性アレルゲンといって、食品そのものに含まれる化学物質が神経に直接作用するものを多く含みます。
仮性アレルゲンにはヒスタミンやセロトニン、チラミンなど様々な種類があります。カフェインも仮性アレルゲンの一種。
つまり、酒さでさけるべきとされている食品には、仮性アレルゲンやアレルギー誘発食品が多く挙げられるという事です。
酒さに関係の深い仮性アレルゲン
仮性アレルゲンはとてもたくさんの種類がありますので、ここでは酒さで避けるべきとされている食品から少し抜粋したいと思います。
ヒスタミン
まず取り上げておきたいのは、ヒスタミン。全米酒さ協会のリストにも「ヒスタミンの高い食品」としてわざわざ1項目挙げられています。
避けるべき野菜や果物として挙げられているナスやトマト、ほうれん草やバナナはヒスタミンを多く含みます。
ヒスタミンを蓄積しやすい食物としては熟成チーズやワイン、魚醤などが挙げられ、カッテージチーズがわざわざ除外されている理由も分かります。
さらに、ヒスタミンには強力な血管拡張作用があり、血圧降下作用を持つ物質です。
辛い食べ物や熱い飲み物を避けるべきなのは、刺激でヒスタミンが遊離するためで、ヒスタミンが過剰に遊離するとアレルギー反応を起こします。
血管拡張作用にアレルギー反応、と酒さや酒さ様皮膚炎には大敵の物質です。
ヒスタミンはアトピーの方が避けるべき物質としても良く登場します。
セロトニン
トマト、バナナ、アボカド、プラムなどに多く含まれるのがセロトニンです。
セロトニンは交感神経に作用し、血圧や心拍数を上昇させる他、体温を調整して覚醒状態を維持します。性質的に睡眠や精神の安定に深く関わる物質です。
さらにセロトニンには血管収縮作用があり、何らかの原因でセロトニンの分泌に異常が出ると偏頭痛を引き起こします。
チラミン
レバーや熟成チーズ、赤ワイン、チョコレートやココアなどのカカオ製品や発酵食品、イチジクやプラム、豆の一部に多く含まれる物質がチラミンです。
チラミンは血管収縮作用があり、こちらは血圧を上昇させる作用があります。
さらに交感神経細胞でノルアドレナリンの遊離を促進し、偏頭痛の要因となり得ます。
カフェイン
カフェインに関して以前に記事にしましたが、こちらには血管収縮作用の他、利尿作用や覚醒作用があります。
血管収縮作用は、血管の異常を抱える酒さ様皮膚炎には大敵の上、利尿作用は体内のビタミンやミネラルの濃度を下げます。
酒さの食事管理は血管への刺激を避ける事を念頭に
こうして見ていくと、酒さが悪化すると言われる物質の多くに血管への作用があります。
酒さ様皮膚炎の肌はステロイドの影響で、毛細血管が拡張しています。
また、酒さは原因不明ながら赤ら顔が特徴で、やはり酒さ様皮膚炎と同様、皮膚の薄さと毛細血管の拡張が見られます。
毛細血管が拡張しているため、さらに血管を広げてしまうような血管拡張作用は避けるべきです。
また、血管収縮作用ならば血管が拡張している赤ら顔にはいいのかと思いがちですが、血管が収縮した後にはその反動で血管の拡張が引き起こされますのでこちらも避けるべき。
つまり、収縮であっても拡張であっても血管への刺激自体が酒さを悪化させます。
酒さ様皮膚炎に顕著な例がステロイドによる毛細血管の拡張です。ステロイドは炎症を抑えるために血管を収縮させます。一時的に炎症を抑えるにはこれで抜群の効果があります。
ところがステロイドで毛細血管が収縮した状態を長く続けると、今度は身体がそれに抵抗して血管を拡張させようとします。酒さ様皮膚炎の肌が血管拡張を起こしているのはこのせいです。
まとめ
酒さを悪化させるから避けるべき、と言われる食品をずらりと一覧にしても、どうしてそれを避けるべきなのか分からない食品も多くあります。
乳製品やココアなどは便秘に良かったり、肌にいいとされていますし、お酢なども健康を推進する食品として広く認知されています。
ところがこれを仮性アレルゲンや血管への刺激という観点から見ていくと、少しは共通項が見えてきます。
醤油や熟成チーズなどの発酵食品がダメなのは発酵過程でヒスタミン含有量が増していくから。
果物も柑橘類やチェリー、アボカド、バナナなどは熟すにつれてヒスタミン量が増えます。
肉や魚は、逆に鮮度が落ちるとヒスタミン量が増えていきます。
少し注意したいのは、ここに挙げられているからと言って一切食べなければ酒さの症状が治るのかというのはまた違うように思います。
アボカドは栄養素豊富な食材として良く紹介されていますし、発酵食品が腸内環境にいいのも周知の事実。悪影響よりもいい影響の方が勝るのであればこのリストに拘らず積極的に摂取したいところです。
どうして酒さが悪化すると言われているかを理解した上で、自分の身体に合えば気にせず摂取、合わなければ上手に避ける、というな柔軟性も長い治療の上で大事になってきます。
避けるべき食品は上手に避けたうえで、醤油など日常生活に深く根付いてしまっているものは鮮度の高いものを使用するなどの工夫もできます。
ある程度上手に避けつつ、特徴をうまく掴むことで、酒さを悪化させないような食生活を送る手助けになるといいですね。