薬箱を整理していたら脱ステ中にお世話になった『紫雲膏』という軟膏が出てきました。漢方軟膏の一種で、天然素材で作られている非ステロイド系の軟膏です。
酒さや酒さ様皮膚炎ではステロイド系の軟膏に限らず化学物質を顔に塗ることを避けると思いますので、顔に塗れるものがないんですよね。
その中でも『紫雲膏』はステロイドを使っていませんし、漢方軟膏なので自然素材で作ってあり、肌に塗れる可能性が高い軟膏です。
脱ステ当時、アトピーの方などのステロイド離脱の経験談を参考に取り入れた覚えがあります。
ごわごわに突っ張って顔を少し動かしただけでパリパリとひび割れるような状態の時に塗っていたなあ、としみじみ。
ものすごくクセのある軟膏で使い勝手は悪いのですが、脱ステ中で顔がつっぱるのに塗れるものがないとか、保湿すると却って熱がこもるけど何か塗るものが欲しいなんて場合に使えるかもしれません。
もくじ
紫雲膏(しうんこう)とは
『紫雲膏』は江戸時代の医師・華岡青洲が考案した軟膏剤で、自然の生薬から作られています。漢方軟膏とも呼ばれます。
華岡青洲と言えば、『十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)』の考案者としても有名。酒さや酒さ様皮膚炎では真っ先に名前が挙がる漢方が十味敗毒湯です。
私は脱ステ中に十味敗毒湯のお世話になっていたので、同じ医師が考案したというだけで効きそうと思っちゃいます。
紫雲膏の効果、効能
紫雲膏は軟膏ですので、主に皮膚疾患に用いられます。
やけどや外傷に限らず、乾燥性アトピー、皮膚のカサつき、しもやけ、湿疹、水泡、あせも、かぶれ、床ずれなど、膿や浸出液の少ない皮膚症状に向きます。
また、痔や肛門裂傷などにも適用されるよう。
紫雲膏の作用
紫雲膏の作用は以下の通り。脱ステに良さそうな作用が並んでいます。
- 抗炎症作用
- 肉芽形成促進作用
- 抗菌作用
- 抗腫瘍作用
抗炎症作用もさることながら肉芽形成促進作用があるので、脱ステでボロボロになった肌の再生が期待できます。
紫雲膏の成分
紫雲膏の成分は以下の通りです。全て自然のものから出来ていますので、手作りする方もいらっしゃるようです。
紫根(シコン)という染料にも使われる生薬が含まれているため、紫雲膏は紫色をしています。
生薬
- 紫根(シコン)
- 当帰(トウキ)
ごま油
ミツロウ
トン脂
シコンとトウキという2つの生薬をごま油で抽出し、ミツロウで固めてトン脂を加えたものが「紫雲膏」。そのため、ごま油やミツロウ、豚の脂が肌に合わない場合には使えません。
各メーカーによって微妙に配合が違う場合があり、それが軟膏の色や匂い、塗りやすさの違いになっています。
紫根
ムラサキ科の植物、ムラサキの根から抽出されます。染料としても使われているため、強力な染色作用があります。
現在ではムラサキが絶滅危惧種のため、同属異種のセイヨウムラサキを代用品として使用しているようです。
抗菌作用や抗炎症作用、肉芽形成促進作用などの創傷治癒作用があり、炎症を抑えて傷の治りを良くする効果が期待できます。
以前にテレビで美魔女さんが紫根エキス入りの化粧水を自作していると話題になって、各所で品切れが起きたそう。漢方薬局が本来の目的で調合しようとしても、材料が手に入らないという事態にまでなったそうです。テレビの力ってすごいですね。
当帰(トウキ)
セリ科のトウキの根から抽出されます。
鎮痛作用や抗炎症作用、解熱作用があります。
温性の駆瘀血剤として用いられるため、月経不順や月経痛などのPMSの緩和や更年期障害に用いられます。身体を暖める作用があり、冷え性の改善に用いられています。
つまり血液の流れをスムーズにする生薬なのですが、患部に血を集めて皮膚の損傷を治します。外用薬の場合は幹部を暖める作用が働くため、暖めるとかゆくなる場合には向きません。
紫雲膏を塗ったらものすごくかゆくなった、という人がいるのは恐らく当帰のこういった働きによるもの。そういう方には後述するタイツコウの方が向くかもしれません。
ごま油
ごま油はそのままごま油ですね。ゴマを焙煎してしぼった油です。中華料理で有名です。
アーユルヴェーダではマッサージをごま油で行うように、古くから皮膚の手入れに使われてきたという歴史があります。
ミツロウ
ミツロウは「蜜蝋」のことで、ミツバチの巣からハチミツを取ったあとのものに熱や圧力をく加えて蝋(ワックス)状にしたものです。
スキンケア用品にも使われていますが、キャンドルなどの材料にも使われます。
古くから美容にいいとされ、肌を柔軟にする効果があります。肌や唇につけるとしっとりとし、保湿効果に優れます。
さらに抗菌作用があるとされており、古くから肌の炎症や切り傷、火傷にも効果があると言われています。
これが自然の乳化剤の役割を果たし、他の油脂や配合成分を均一に分散して安定させます。つまり、ミツロウは天然の界面活性剤のような役割を果たします。
トン脂
「トン脂」と言われても分からないと思いますが、感じで書くと「豚脂」。つまり豚の脂(ラード)です。
動物性油脂ですから馬油やラノリン(羊の脂)と同類です。一般的に動物性油脂は人の肌との親和性が高いと言われており、スキンケアなどに用いられます。
紫雲膏の注意点
落ちにくい点に注意
まず、紫雲膏はお湯だけではなかなか落ちません。石けんやクレンジングが必要なくらいの頑固さですが、酒さや酒さ様皮膚炎、特に脱ステロイド中に石けん洗顔やクレンジングは肌を傷める元です。
そのため、オリーブオイルやホホバオイルなどの油性成分で軟膏をなじませてから落とすなどの工夫が必要です。こういった性質上、漢方薬局で調合して頂ける場合はオリーブオイルなども同時に処方して頂くことが多いよう。
オイルは肌に合えばオリーブオイルでもベビーオイルでも何でもいいですが、オイルを落とすための石けん洗顔をするか、それともぬるま湯で落ちる程度で我慢するか、とても悩ましい問題が残ります。
水分がある皮膚疾患には向かない
また乾燥性の皮膚疾患に向くため、膿や浸出液があるようなじゅくじゅくタイプの皮膚疾患には向かないようです。
水分の多いタイプの皮膚疾患では、後述するタイツコウの方が良さそうです。
水分が出てきたら紫雲膏に粉体を混ぜて効きを良くするなんて話も聞きましたが、やるなら熟練の漢方医さんに調合してもらいましょう。そうでない場合は素直にタイツコウを用意した方が簡単そうです。
暖めてかゆくなる場合にも向かない
当帰(トウキ)の項目でも説明したように患部を暖める働きがあるため、暖めてかゆくなる場合はタイツコウの方が向きます。
日焼けに注意
紫雲膏はごま油やラードなどが入っています。油なので、顔などに塗った状態で強い紫外線に当たってしまうと日焼けを促進します。
酒さや酒さ様皮膚炎は紫外線も立派な悪化要素の一つ。外出時には塗らない、夜だけ塗る、などの工夫をしたうえで使いましょう。
塗り過ぎに注意
紫雲膏は保湿効果もありますが、患部をべったりと覆う保護剤としての役割も大きいです。
ワセリンなどを塗り慣れている方は分かるかと思いますが、塗りすぎると却って熱がこもります。
熱がこもって悪化する場合には、べったりとは塗らずうっすらと塗るようにします。
ワセリンと同様、保護剤としてべったりと塗るか、保湿剤としてうっすらと塗るか、塗り方の難しいお薬でもあります。
紫雲膏の副作用
紫雲膏の添付文書に書かれている副作用として以下のようなものがあります。
- 発疹
- 発赤
- かゆみ
紫雲膏の成分が肌に合わずにかぶれてしまい、赤くなったりかゆくなったりすることもあり得ます。
特にごま油やミツロウにかぶれてしまうことがありますので、注意して下さい。
ミツロウは色々な化粧品にも配合されており、比較的安心な保湿成分ではありますが、肌が弱い人で反応してしまう人もそこそこいます。
紫雲膏の使いごこち
紫雲膏には染料に使われる生薬が入っていますので、とても鮮やかな色がついています。紫と言われますけど、赤紫という感じ。
この染料のせいで、服や寝具につくと取れません。
また、昼間の外出時なども注意が必要で、皮膚に塗ってもうっすらと赤い色が残ります。
テクスチャもべっとりとしていて、さらっと塗り広げられるわけではなく、重たい使い心地の軟膏です。塗りにくく取れにくいので、一度塗ると他のところにつかないよう、ものすごく神経を使います。
さらに、独特の匂いがあって、苦手な人は塗れないかもしません。ごま油臭いです。
酒さや酒さ様皮膚炎で使おうとする場合は、顔に塗るでしょうから、臭いはどうしても鼻につきます。
私は夜寝る前につけて、マスクで汚れ移りをガードして寝ていました。そういう使い方をしていたので、マスクでかぶれてしまう場合には向きませんよね。
寝る時に寝具を汚れても良いように工夫してマスクなしで塗るか、外出せずに済むような日に塗って顔に触れないようにするか。とにかく塗るにも工夫が必要です。
肉芽形成促進というか、傷を治す作用は実感できるほどでしたから、肌状態と使い方が合えばとても良いお薬だと思います。
古くから火傷にも使われていますが、私はやけどした時は馬油で対処しちゃうので分かりません。でも、切り傷に塗っておいたらすぐに治りました。
馬油も、何も塗るものがない時に塗れるかもしれないアイテムの一つですね。馬油は薬ではないので紫雲膏よりももっと作用は穏やかですが、これほど強いクセはなく使いやすいです。
似たような漢方軟膏に太乙膏(タイツコウ)も
私の薬箱から出てきたのは紫雲膏(シウンコウ)なのですが、似たような漢方軟膏に太乙膏(タイツコウ)というものもあります。紫雲膏と同じように自然のものから出来ている軟膏です。
こちらも、紫雲膏と同じように脱ステ中に使っている方が多数。どうやらカレーの匂いがして服につくと取れにくいとのこと。漢方軟膏ってやっぱりクセがあるんですね。
体質的に合う合わないがありますので、どちらが合うかは人それぞれですが、紫雲膏が合わなくてもタイツコウが合った人もいれば、逆の人も。
紫雲膏は膿や浸出液がある場合には向きませんし、熱を集めて傷を治すような組成ですので、症状によっても紫雲膏がいいかタイツコウがいいかに分かれるようです。
紫雲膏は塗ったらかゆくなって塗れなかったけれども、タイツコウはめちゃくちゃ効いた、なんて口コミも見かけましたので、両方とも試してみてもいいかもしれません。脱ステ中って一刻も早くどうにかしたいですし。
私はどっちも買おうとして薬局に行ったら、紫雲膏の方しか置いていなかったので紫雲膏を使い始めました。タイツコウの方って、あんまりドラッグストアで見かけないような気がします。
タイツコウの成分は以下の通りです。
生薬
- 当帰(トウキ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 大黄(ダイオウ)
- 地黄(ジオウ)
- 玄参(ゲンジン)
- 白止(ビャクシ)
ごま油
ミツロウ
7つの生薬をごま油で抽出し、ミツロウで固めたものが「タイツコウ」。そのため、ごま油やミツロウが肌に合わない場合には使えません。
まとめ
最近あごの状態がひどくて、生理前になったら脱ステ中のように皮膚がゴワゴワするくらいまで炎症を起こしちゃいました。
頬の状態はとても良くってブツブツもできないし赤みも薄れていってるのに、どうしてこう次から次へと問題が出てくるんでしょう・・・。
あまりにもアゴの状態がひどくてスキンケアがどうの、というレベルではないので何かないかと漁ったら出てきたのがこの『紫雲膏』。
脱ステ中に使ってたんだから、今でも使えるはず。生理が来ても良くならなければ、しばらくアゴに使ってみようかと考えています。
酒さや酒さ様皮膚炎って「塗るものがないにも関わらず何か塗らないと辛い」っていう肌状態になることが多いと思いますので、紫雲膏はそういう時の選択肢の一つになるんじゃないかと思います。
でも、本当に使い勝手が悪いしクセの強い軟膏なので、合わない場合はムリせずに。初めて使う場合にはダメージの少ない箇所で試し塗りやパッチテストをしてから使ってみてください。
脱ステで使えるかもしれない軟膏には、他に亜鉛華軟膏などもありますので、興味があればそちらも見てみてください。