酒さで黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)という漢方薬を処方される事があります。ツムラで言うと15番の漢方薬。
黄連解毒湯には身体の熱を鎮めたり、イライラを落ち着かせたりする効果があり、のぼせ気味で顔の赤い方に処方されることから、酒さへの相性は良い漢方薬です。
酒さや酒さ様皮膚炎に処方されやすい漢方薬は他にもありますが、今回は黄連解毒湯に焦点を当てて見ていきたいと思います。
もくじ
黄連解毒湯とは
黄連解毒湯は比較的体力がある人に向いており(実証)、のぼせ気味で血圧が高め、顔色が赤く、イライラして落ち着かない傾向の人に向いています。身体の熱や炎症を取る効果があります。
のぼせ、ほてり、イライラ感、不眠、動悸、胃炎、鼻血などの出血、あるいは高血圧にともなう頭重感や肩こり・めまい・耳鳴りなどに適応します。
諸症:
鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症注)、めまい、動悸、 更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
黄連解毒湯に使われている生薬
黄連解毒湯に使われている生薬は4種類で比較的シンプルな作りです。
- 黄連(オウレン)
- 黄ごん(オウゴン)
- 黄柏(オウバク)
- 山梔子(サンシシ)
いずれも熱や炎症を鎮め、身体を冷やす作用があります。身体を冷やす効果があるため、熱や炎症のない人には黄連解毒湯は向きません。
酒さでは顔の炎症がある場合が多く、のぼせやほてりといった熱バランスの崩れもあるため比較的合いやすいですが、身体を冷やす漢方ですので冷えのひどい場合には難しいかもしれませんね。
黄連解毒湯によって炎症や熱を取ることが酒さ症状の改善に貢献してくれる場合もあると思います。一方、身体を冷やすことによって冷えが促進されると、酒さの原因とも言われる免疫や、腸内バランス、自律神経への影響が出る可能性もあります。
黄連解毒湯が向く人向かない人
黄連解毒湯が向く人は以下のようなタイプ。
- 比較的体力がある
- のぼせぎみ
- 顔が赤い
- イライラしやすい
逆に黄連解毒湯が向かない人は以下のようなタイプです。
- 虚弱体質
- 冷え性
- 胃腸が弱い
虚弱体質だったり冷え性の方、胃腸が弱い方は同じ身体の熱を取る漢方でも別のものを検討した方が良さそう。
虚弱体質向けで冷え性改善にも貢献し、酒さにも処方される漢方だと、代表的なものに加味逍遙散(カミショウヨウサン)があります。
黄連解毒湯は何に効くか
酒さに黄連解毒湯
まずは酒さに対して。黄連解毒湯の熱や炎症を取る作用が有効に働けば、酒さ症状に効きます。
また、イライラを鎮める作用がありますので、酒さによって精神的に不安定になっていてそれが酒さ症状をさらに悪化させているような場合にも効き目がありそう。
ただし、酒さといっても人によってタイプが違い、黄連解毒湯が効かないタイプの酒さもいます。
のぼせに黄連解毒湯
酒さと似ていますが、顔がのぼせることにも黄連解毒湯が効きます。更年期などに起こりやすい症状としてホットフラッシュとも呼ばれます。
高血圧にも関係が深く、黄連解毒湯には身体の熱を取る作用がありますので、のぼせにも効果的です。
ニキビやアトピーに黄連解毒湯
黄連解毒湯には炎症を鎮める働きがあります。こういった作用がアトピー性皮膚炎やニキビ、皮膚のかゆみなどに効くことがあります。
ニキビは炎症を起こしているようなタイプ、アトピーには赤みを帯びて熱を持っているようなタイプに効きます。
口内炎に黄連解毒湯
口内炎も炎症の一つですから、黄連解毒湯の抗炎症作用が有効に働きます。前述のニキビやアトピーなどと同様、皮膚炎の一種ですので口角炎などにも有効です。
鼻血に黄連解毒湯
黄連解毒湯の効果・効能にはわざわざ「鼻出血」と記載されています。
鼻は柔らかい粘膜できており、細かい血管がたくさんあります。黄連解毒湯には高血圧を鎮める効果もありますので、活発になった血流を抑え、血管を破れにくくすることで鼻血を防ぎます。
ホルモンバランスの調整に黄連解毒湯
黄連解毒湯の効果、効能には血の道症や更年期障害といったものがあります。
血の道症とは女性の月経トラブルや妊娠、出産など、ホルモンバランスの変動によって引き起こされる症状です。
更年期障害も女性ホルモンのバランスが崩れて起こります。
黄連解毒湯はこういったホルモンバランスの調整を行い、結果的に精神安定や苛立ちの緩和にも繋がります。
イライラや精神不安に黄連解毒湯
黄連解毒湯は元々イライラしやすい方向けの漢方です。中でも体力のある人に向いており、身体の機能が活発になり過ぎていて熱を持つような場合に向きます。
身体の熱バランスを整えて活発になりすぎた神経を鎮めることで、怒りっぽかったりイライラしやすい傾向を抑えます。
不眠症に黄連解毒湯
イライラや精神不安と共通する点がありますが、身体の機能が活発になりすぎてしまうと頭が冴えて眠れないことがあります。
黄連解毒湯は身体の熱を鎮めますので、頭が冴えて眠れないタイプの不眠症に向きます。
二日酔いや悪酔い防止に黄連解毒湯
黄連解毒湯には熱を冷ます働きがあります。そのため、お酒を飲む前に黄連解毒湯を服用しておくことによって、アルコールの代謝が高まり、アルコールによる熱を冷ましてくれます。
これにより、二日酔いや悪酔いの防止に繋がります。
黄連解毒湯の副作用
漢方薬は西洋薬よりも副作用が少ないと言われてはいますが、人によっては体質に合わないこともあり得ます。
服用時にむかむかしたり、食欲がなくなったりなどの症状が出る場合には主治医に相談の上漢方薬の変更を行った方がいいかもしれません。
黄連解毒湯の副作用は滅多にありませんが、まれに以下のようなものが知られています。
- 間質性肺炎
から咳、息苦しさ、少し動いただけで息切れ - 肝機能障害
食欲不振、だるさ、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、黄疸 - 腸間膜静脈硬化症
長期服用時に腹痛、下痢、便秘、腹部膨満
酒さと漢方薬
酒さや酒さ様皮膚炎の治療は長期に渡ることから、抗生物質との併用で漢方薬での体質改善を図ったり、抗生物質での治療が一区切りつくと漢方薬に切り替えていったり、といったような治療も行われます。
また、漢方薬の考え方には身体の熱バランスを正常化したり、血液の流れを正常化するといった考え方があります。酒さはまさに顔のほてりという身体の熱バランスが崩れた状態ですし、酒さの顔の赤みは毛細血管の拡張が原因ですから、血流異常も抱えています。
こういった事から、酒さと漢方薬との相性は意外と良く、漢方薬で酒さ症状が改善したという口コミは多く見かけます。
難しいのは漢方薬は体質に合わせて処方され、自分の体質に合っていないと効き目が薄いこと。
他の人が飲んでいて酒さに効いたからといって、必ずしも自分に効くわけではないのですね。
どのお薬にもそういう傾向はありますが、漢方薬は個人の体質に合わせて処方されるという性質上、この傾向が強くなります。
まとめ
酒さや酒さ様皮膚炎にも色々な漢方薬が処方されます。
黄連解毒湯はその中でも比較的体力があってイライラしやすい人に向く漢方。
漢方薬は体質にぴったり合えばかなりの改善が見込める場合もあり、自分に合った漢方薬があれば酒さ症状だけでなくその他の症状の改善にも繋がります。
黄連解毒湯であれば精神不安やイライラに作用することで、結果的に酒さの悪化要素であるストレスが軽減され、酒さ症状が改善するというような効果も期待できます。
酒さや酒さ様皮膚炎には直接的なアプローチがなかなか取れず、このように間接的なアプローチが有効な事も多くあります。
気の長い話ではありますが、治療期間の長くなる酒さでは自分に合った漢方薬が体質改善の助けになることも。
黄連解毒湯が自分の体質に合っていれば、何かしらの自覚症状はあるかと思います。どういったことに効くのかを知っておき、酒さ治療の一環として取り入れるのかどうかの判断基準にして頂ければと思います。