先日の皮膚科で消風散(ショウフウサン)という漢方薬を処方して頂きました。消風散はツムラでいうと22番のお薬。
酒さやアトピーのような皮膚疾患にも良く処方されているようで、分泌物が多くかゆみが強い皮膚疾患に向きます。
今回はこの消風散の特徴や酒さ、酒さ様皮膚炎に対する効果を見ていきたいと思います。
もくじ
消風散(ショウフウサン)とは
消風散(ショウフウサン)は、中程度以上の体力の人向けの漢方薬。かゆみや分泌物を抑え、皮膚の赤みを防ぎます。熱感やかゆみがある時に用いられ、湿疹や皮膚炎に適しています。
皮膚の赤みやカユミを発散し、分泌物をおさえます。また、そのようになりやすい体質を改善します。体力が中くらい以上の人で、熱感やカユミが強く、じゅくじゅくした湿疹に適します。
体力中等度以上の人の皮膚疾患で、かゆみが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの次の諸症:
湿疹・皮膚炎、じんましん、水虫、あせも引用:ツムラ漢方 – 消風散
消風散の向き不向き
消風散が向くタイプ
消風散は以下のような人に有効とされています。
- 体力が中程度以上(実~中間証)
- かゆみが強い
- 分泌物が多い
- 患部がジュクジュクする(湿証)
- 局所の熱感がある(熱証)
- 皮膚の赤みがある
消風散が向かないタイプ
消風散は患部の熱を取り、ジュクジュクとした分泌物を発散させる漢方です。性質上、以下のような人には不向きと言われています。
- 著しく体力のない人(虚証)
- 冷え性
- 胃腸が弱い
- 食欲不振や吐き気、下痢を起こしやすい
消風散に使われている生薬
消風散には13種類と多くの生薬が使われています。
消風散の「風」は皮膚など身体の表面にある病気のことを表します。「風」を「消す」ことによって皮膚病を治すという意味合いがあり、皮膚病に特化した生薬が広く使われています。
- 地黄(ジオウ)
ゴマノハグサ科ジオウ属植物の根茎。止血、補血、滋養、強壮作用。 - 石膏(セッコウ)
天然の含水硫酸カルシウム。解毒作用、鎮痛作用、消炎作用。 - 当帰(トウキ)
セリ科ニホントウキの根。鎮痛作用、鎮静作用、利尿作用、強壮作用。 - 牛蒡子(ゴボウシ)
キク科のゴボウの果実。祛痰、止咳、解毒作用。 - 蒼朮(ソウジュツ)
キク科ホソバオケラの根茎。健胃、整腸、利尿作用。
- 防風(ボウフウ)
セリ科ボウフウの根および根茎。発汗作用、解熱作用、鎮痛作用。 - 木通(モクツウ)
アケビ科のアケビやミツバアケビの茎。清熱、利水、利尿作用。 - 胡麻(ゴマ)
ゴマ科のゴマの種子。補陰、潤腸、補肝腎作用。 - 知母(チモ)
ユリ科ハナスゲの根茎。鎮静作用、解熱作用、利尿作用。
- 甘草(カンゾウ)
マメ科の甘草の根。鎮静作用、肝機能改善作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用。取りすぎると偽アルドステロン症などの副作用があります。 - 苦參(クジン)
マメ科クララの根。清熱、止痒、利水作用。 - 荊芥(ケイガイ)
シソ科ケイガイアリタソウの金草。発汗・解熱作用、消炎作用、止血作用。 - 蝉退(センタイ)
セミ科のスジアカクマゼミなどの幼虫のぬけがら。止痒、散熱作用。
多くの生薬が使われているので効きそう、と思いがちですが漢方薬の専門家によると生薬が多く使われているとその分効き目がぼやけることもあるそうで。
酒さやアトピーのような皮膚病の諸症状を幅広くカバーできる代わりに、ピンポイントで症状を改善させる力は弱い、ということかもしれません。
消風散に使われている生薬の働き
消風散には13種類と多数の生薬が配合されていますが、その多くが皮膚疾患に適したものです。
- 荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ) ⇒ 発汗、解熱。
- 蒼朮(ソウジュツ)、木通(モクツウ) ⇒ 湿潤(じゅくじゅく)を取る、水分発散
- 石膏(セッコウ)、知母(チモ) ⇒ 炎症を抑える
- 苦參(クジン)、蝉退(センタイ) ⇒ かゆみを抑える
- 地黄(ジオウ)、当帰(トウキ) ⇒ 血行促進
- 牛蒡子(ゴボウシ) ⇒ 排膿、解毒を助ける
これらの生薬が一緒に働くことで相乗効果が生まれ、かゆみや炎症、浸出液などの皮膚疾患を改善させます。
消風散の副作用
漢方薬と言えども多少の副作用が起きることはあります。漢方の体に優しい、とか自然なイメージは副作用を起こさないということではありません。
特に漢方薬は症状に合わせて処方するのではなく、体質に合わせて処方するという特徴があるため、体質に合わない場合には副作用や症状を悪化させることもあります。
典型的な副作用としては、胃がムカムカしたり食欲がなくなったりということがあり、だるさを感じることもあります。
漢方薬には好転反応という概念もありますが、本来の好転反応は数日で治まるものです。症状が続くようならかかりつけ医に相談しましょう。
消風散の甘草は偽アルドステロン症に注意
消風散には「甘草(カンゾウ)」が入っています。この甘草を大量に摂取しすぎると偽アルドステロン症を発症することがあります。
甘草を含んだ方剤との飲み合わせには注意が必要です。
また、漢方薬には副作用がないわけではなく、西洋薬に比べれば副作用が少ないだけで、体質に合わない場合は副作用のような症状が現れます。
体質に合わない場合、多くは胃のむかつきや頭痛、むくみや動悸のような症状が現れます。
副作用のような症状が現れた場合は無理して飲まず、主治医に相談して別の漢方に変えてもらった方がいいでしょう。
消風散と酒さ、皮膚病の関係
消風散は皮膚病に関係の深い漢方薬で、その作用にも酒さなどの皮膚疾患に役立ちそうな効果が並んでいます。消炎作用あたりは酒さなどの皮膚病には必須の作用ですね。
基本的には患部に赤みが強く、分泌物が出るような皮膚疾患に向きます。ツムラやクラシエによる消風散の解説にも、以下のようにあります。
体力中等度以上の人の皮膚疾患で、かゆみが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるもの
引用:ツムラ漢方 – 消風散
患部に赤みが強く、分泌物が多く出るような慢性湿疹に効果があります。
消風散が向きそうな酒さタイプ
消風散の特性から、酒さの中でも酒さ性ざ瘡(ブツブツ)が多くてかゆみがあり、ほてり感が強い場合に向きそうです。ブツブツが重症化して黄色い汁や膿が出ている場合にも良さそうですね。
また、酒さ様皮膚炎の脱ステ中で患部の熱や膿、リンパ液がすさまじい事になった場合にもかなり適応が高そう。
浸出液が出ている時に向いているような漢方ですから、軽症の方よりも重症の方に効果が出そうです。
消風散が向かなそうな酒さタイプ
逆に消風散が向かなそうな酒さといえば、乾燥で悪化するタイプの酒さ。
消風散は湿潤を取るための漢方薬ですから、利尿作用や発汗作用があり、水分を取ってじゅくじゅくを治そうとします。
このため、乾燥で肌状態が悪化するようなタイプの酒さには不向き。酒さ様皮膚炎で脱ステ中は浸出液に悩まされて効果が出ていても、脱ステが落ち着いたら本来の乾燥肌の性質が強く出始めた、なんて場合も注意が必要です。
ただ、自分が向かないタイプであったとしても一緒に処方されている漢方薬とのバランスで調整している場合も多くあります。素人判断で服薬を中止せず、必ずかかりつけ医に相談するようにしましょう。
消風散(ショウフウサン)の購入方法
消風散はドラッグストアやAmazonなどでも購入ができます。市販で広く流通しているのはツムラのものかクラシエのもの。
保険診療で処方して貰える場合にはそちらの方が安く済みます。
ツムラ 消風散
ツムラの消風散は顆粒タイプです。顆粒は味が苦手な方は飲みにくい反面、錠剤よりも吸収率が良いとされています。
1回量 | 服用回数/日 | 時間 |
---|---|---|
1包 | 2回 | 食前 |
クラシエ 消風散
クラシエの消風散は錠剤タイプ。顆粒が飲めない方にはこちらがおススメ。
1回量 | 服用回数/日 | 時間 |
---|---|---|
4錠 | 3回 | 食前または食間 |
まとめ
今回は皮膚疾患に広く処方されやすい消風散(ショウフウサン)という漢方についてまとめてみました。
消風散のような漢方薬は保険適用でもありますから西洋医でも処方でき、ドラッグストアなどでも気軽に購入できるというメリットがあります。
とりあえず漢方薬を試してみたい、という入り口にはもってこいではありますが、本当に漢方薬で改善させようとすると中医学をしっかり学んだ医師の診察を受けた方が良さそうです。
漢方専門医は処方によってかなり高額になることもありますので、消風散のような気軽な漢方で少しでも症状が改善されれば経済的にも時間的にも助かりますね。
酒さ治療に漢方薬を使うにしても色々な方法がありますから、消風散も一つの手段として覚えておいて頂ければと思います。
皮膚科で処方された方やこれから購入しようと思っている方のお役に立てれば幸いです。
コメント
はじめまして。夫が恐らく酒さ様皮膚炎なのではないか?と疑っておりまして、こちらのブログで勉強させていただいています。
夫はアトピーで身体にステロイドを使っていました。顔には殆どアトピーの症状は出ていないものの、皮脂欠乏症と診断された事がある乾燥肌です。
皮膚科で顔にタクロリムス軟膏を処方され、ただ乾燥する程度なのに夫はタクロリムス軟膏を塗り続けていました。
1~2ヶ月前から何となく夫の顔が赤いなぁ~と思っていたのですが、お風呂上がりだからかな?とか暖房のせいかな?と思っていたんです。
それが2週間前になると、顔中に赤ニキビの様なブツブツまで!!
夫はそれでもっと一生懸命タクロリムス軟膏を塗るように。症状はますます悪化。
夫は今まで顔にニキビなんて出来た事があません。
ネットで調べるとタクロリムス軟膏の副作用に症状がピッタリ当てはまるじゃないですか。
同じ皮膚科に行くか迷いましたが、別の皮膚科を受診させると診断名は言われなかったそうですが、今まで使っていた軟膏のせいもあるみたいな事を言われたようです。
また顕微鏡でニキビダニの検査もしたところニキビダニも通常より増えていると言われたみたいです。
そして、タリオン錠、ビオチン、ビタミンB、清上防風湯、スタデルムクリームを1週間分処方されました。ステロイドやプロトピックを処方されなかったので、信頼出来るお医者さんかな?と思っているのですが…
今度の水曜日にまた受診ですが、今のところ良くなっているのか悪化しているのかも分からずです…こちらのブログや他の方のブログでも一朝一夕で良くなるわけじゃないと分かっていますが、少しでも回復しているんだ…という確信が欲しくてたまりません。
ただ夫の場合、まだ酒さ様皮膚炎と診断された訳ではありません。今のところ??
酒さ様皮膚炎の方は、脱ステして酒さやブツブツが発生するみたいですが夫は脱ステせずタクロリムス軟膏を使い続けている最中に赤み~ブツブツになってしまいました。
こういう場合でも酒さ様皮膚炎と言うことはあるのでしょうか?
私は絶対薬が怪しいと思っているのですが…
夫の今の症状は、顔が全体的に赤くなりブツブツだらけ。皮膚は乾燥してゴワゴワ、まさに象の皮膚。現在ブツブツの悪化が怖くては保湿はしておらず、ところどころ皮むけ。
痒みや痛み、膿はありませんが多少の火照り。
鼻の横の頬骨部分が触ると変に固くなっている。(浮腫んだように腫れている感じ?)です。
夫は男だしあまり自分の外見を気にしない人なので、肌が綺麗になりたい!みたいなのはないのですが職業が営業なのです…自分の外見が~というより、そこを心配しております。
ぶっちゃけ鏡を見ながら自分で「でも、顔が赤い方が林檎みたいで可愛くない?」なんて言っており、ちょっと笑ってしまいました。
でもブツブツは人に移りそうと思われそうだし、皮むけも不潔に見られそうでそこが職業柄気になっているみたいです。
酒さ様皮膚炎で出来るこのブツブツは、結局、ステロイドで免疫が落ちて出来るニキビ…何でしょうか?
決して皮脂の多くない夫にニキビダニが増えているのも、免疫力が低下して増えたのかな?と思っています。
youさん、こんばんは。
コメント頂きありがとうございます!
旦那さまが酒さ様皮膚炎かもしれないと、側で悪化を見ている方としては気が気じゃないですよね(´Д`。)
アトピーの方が酒さや酒さ様皮膚炎を併発しているというのは、それほど珍しい話ではありません。
最初の頃はアトピーの症状であっても、そのうち酒さも併発し、長年ステロイドやプロトピックを併用するうちに酒さ様皮膚炎になっていた、というのは良く聞きます。
ただ、アトピーの方であっても長年ステロイドやプロトピックを使ってコントロールされ、酒さ様皮膚炎を発症されない方もいらっしゃいます。
この長年使っていても発症するかしないか、というのは酒さの素養を持っている人が発症しやすいとも言われていて、まだ未知の部分が多いようです。
プロトピックは顔の赤みを抑える良いお薬なんですが、ご懸念の通り酒さ様皮膚炎を発症してしまう事もあり得ます。
ステロイドによる酒さ様皮膚炎よりも少数だとは言われていますが、全くないとわけではありません。
プロトピックは免疫抑制の作用がありますから、皮膚の良い常在菌まで殺してしまってニキビになりやすいということも確かにあります。
ただ、私がyouさんからお聞きしたことだけで、ご主人が酒さや酒さ様皮膚炎であるかどうか断定することはできません。
酒さ様皮膚炎と間違いやすい皮膚炎もありますし、実際の判断は皮膚科の医師にお任せして下さい。
最近行かれた皮膚科はステロイドでのコントロールが一般的なアトピー治療の中で、軟膏による害かもしれない、という指摘もあったようですし、ビオチンの処方なんかもあったようなので、少しお任せしても良さそうに感じます。
数日程度で改善する症状でもありませんから、youさんも感じておられる通り、皮膚科に行かれて数日では回復したかどうかの判断もできません。
少し気長に取り組む必要がありますので、そこはご承知ください。
でも、皮膚科を変えられたり、肌の状態を細かく観察なさったりといった努力は、今後の肌改善にとても役立つことだと思います。
youさんがとても丁寧に症状をお話ししてくださったので、何となく悪化の様子は想像ができます。
象の肌、というのも私が脱ステ中に経験したので良く分かります。
シワも増えて動物の肌かと思うほど硬くなっちゃんですよね。
どういった診断がつくにせよ、ご主人の肌が弱っていることは確かだと思います。
それでも根っこにはアトピー&超超敏感肌があるんだ、と考えてケアをすれば少しは気が楽にならないでしょうか。
酒さもアトピーも、体質によるものが大きいですから悪化する要因も改善する方法も人それぞれです。
ある人にとっては保湿が正解でも他の人にとっては保湿が害になる、ということはザラに起こります。
ですからyouさんがご主人のお肌を良く観察されているということは、すごく強みだと思います。
それと、ご主人が外見を気にされないのは幸いだと思います。
酒さやアトピーのような皮膚病はストレスが大きな悪化要因ですから、顔を気にされるとそれで悪化するという無限ループに陥ってしまいます><
営業職ということですから、清潔面に関わるような皮むけや浸出液は困るかもしれませんね。
プロトピックを止めるということになれば離脱症状でそういった症状が出る可能性もありますので、いざ止めるのであれば抗生物質を使って抑えながら止めることができないか、または減ステという、少しずつ減らしていくようなことが可能なのか、主治医と良く相談なさってください。
今はどんな方向に進むのかが見えなくてご不安もひとしきり、だと思います。
あまり的確なアドバイスもできませんでしたが、私で良ければいつでもお話を伺いますので、気が向いた時にはまたいらして下さいねΣ(σ`・ω・´)σ
ろーざ様 お返事ありがとうございます。
ついつい日々目に見えた変化を期待してしまいがちですが、焦ってもどうにもなりませんね。実は転勤族だったので、今まで皮膚科を転々としていてロコイドなどのステロイドを顔に出された事もあったと記憶しています。
酒さ様皮膚炎に限りませんが、皮膚の病気は皮膚科選びも治療も中々難しいものがありますね。
私は長年ニキビに悩んでいた経験があるので…
現在田舎に住んでおり、皮膚科の情報も乏しく兎に角、今度は薬を出してハイ、終わり…ではないお医者さんを…と思っていました。何とか今度のお医者さんの下で治療を続けていけたら一番いいな…と思っているところです。
ろーざ様のブログには本当に感謝しています。私もそうですが沢山の方々の心の支えになっていると思います。
このブログを訪れる皆様の症状が少しでも快方へ向かいますように…
これからも是非色々と勉強させてくださいね。
ありがとうございました。
youさん。
焦ってしまう気持ちは良く分かります。私も脱ステ中は理屈では分かっているのに毎日のように鏡を見て少しでも良くなった証を探していました^^;
少し気長に取り組む必要があるとはいえ、youさんの観察や励ましなどはご主人にとって大きな支えとなると思います。
側で見ていて気が気じゃないかもしれませんが、youさん自身も疲れてしまわないようにして下さいね。
相性の良い皮膚科に巡り合うのは至難の業ですね><
薬出しておしまい、みたいなところが多いので、こちらがどういう風に皮膚科を使うかも考えないといけませんね。
そういうお医者さまでも長年通うと意外と色々な話ができるようになったりするのですが、転勤が多いとなるとそういった信頼関係を築く前に次の土地ですね(T-T )( T-T)
転勤が多いと皮膚科という面ではアトピーの余蘊慢性疾患には向かないので、大変だったことだと思います。
今回のお医者さまはステロイド一辺倒ではないみたいなので、期待できるといいですね!
私のブログがyouさんや他の皆さんのお役に立てているなら作った甲斐があります。
そういう風に言って頂けるととても励みになりますので、こちらこそありがとうございます。
他の皆様の快方も願ってくださって、本当にありがとうございます。
ほんと、皮膚病で悩む人の症状が少しでも楽になるといいですよね。
また何かわからない事や聞きたいことがあったら遠慮なく声かけて下さいね。
いつでもお待ちしています!╭( ・ㅂ・)و̑