酒さや酒さ様皮膚炎では治療に漢方薬が用いられる事が多くあります。
漢方薬には長期的に見て体質を改善する効果が期待できるほか、血液循環や更年期など、酒さ症状が悪化する原因にアプローチできるものが多くあります。
漢方薬の考え方には「瘀血(オケツ)」というものがあり、血液の流れが滞ることで様々な病の原因になると考えられています。酒さや酒さ様皮膚炎は毛細血管が拡張していますから、まさに血液の異常を抱えている状態。
また、治療期間が長期に渡る酒さや酒さ様皮膚炎では、長期服用により体質改善の効果が期待できる漢方薬との相性が良いということもあります。
今まで個別に酒さや酒さ様皮膚炎の漢方薬を紹介してきましたが、一覧としてまとめておいたページがあると便利だと思ったのでまとめておきました。
もくじ
黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
証:
実証(体力充実)
熱証(ほてり・暑がり)
気上衝(のぼせ・イライラ・緊張・不安)
向く人:
体力があってのぼせ気味、イライラしやすい人
働き:
体の熱や炎症を鎮めます。
症状:
のぼせ、ほてり、イライラ感、不眠、めまい、動悸など。
加味逍遙散(カミショウヨウサン)
証:
虚証(虚弱)
寒証(冷え)
湿証(水分停滞)
お血(血流停滞)
気上衝(のぼせ・イライラ・緊張・不安)
向く人:
体質虚弱な女性で、冷えやのぼせの傾向があり、PMSや更年期の症状がある人。
働き:
血流異常を改善します。血液循環を良くして身体を暖め、上半身の熱を冷まします。
症状:
手足の冷え、のぼせ、生理不順、生理痛、頭痛、肩こり、不眠、神経症など。
荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)
証:
中間証~やや虚証(中くらいの体力)
熱証(ほてり・暑がり)
向く人:
体力中くらいで血行が悪く皮膚の色が浅黒い人。
働き:
身体の熱や腫れを鎮め、血液循環を良くします。
症状:
蓄膿症、慢性鼻炎、炎症を伴うニキビや湿疹。
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
証:
中間証(体力中くらい)
お血(血流停滞)
向く人:
体力中くらいで冷えやのぼせの傾向があり、PMSや更年期の症状がある人。
働き:
血行を良くして熱バランスを整え、冷えやのぼせを改善します。ホルモンバランスの調整を行うためPMSや更年期にも適します。
症状:
生理不順、生理痛、頭痛、めまい、肩こり、のぼせ、冷え、更年期障害など。
十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
証:
中間証(体力中くらい)
向く人:
体力中等度な方の皮膚疾患で、発赤があり化膿する事がある人。
働き:
皮膚の赤みやかゆみを鎮め、腫れや化膿を抑えます。発赤や化膿した皮膚疾患、湿疹などに適します。
症状:
化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、水虫
清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
証:
実証(体力充実)
熱証(ほてり・暑がり)
向く人:
体力があり、赤ら顔でのぼせの傾向にある人。
働き:
顔の熱や炎症を取り、皮膚病を鎮めます。顔の皮膚病、特にニキビに適します。
症状:
にきび、顔面や頭部の皮膚炎、赤鼻(酒さ)
白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
証:
実~中間証(体力は中程度以上)
熱証(ほてり・暑がり)
燥証(口渇)
向く人:
比較的体力があるほてり気味の方で身体の灼熱感や発赤、かゆみがあり、喉の渇きや多尿の傾向がある人。
働き:
身体の熱を冷まし痒みを鎮めます。喉の渇きも癒します。
症状:
ほてり、多汗、息切れ、口渇、糖尿病など。
酒さ、酒さ様皮膚炎の漢方薬早見表
証 | 体力 | 向き | |
---|---|---|---|
黄連解毒湯 | 実証 熱証 気上衝 | ある | のぼせ気味でイライラしやすい人 |
加味逍遙散 | 虚証 寒証 湿証 お血 気上衝 | ない | 冷えやのぼせ、PMSや更年期の症状がある人 |
荊芥連翹湯 | 中間~やや虚証 熱証 | 中の下 | 血行が悪く皮膚の色が浅黒い人 |
桂枝茯苓丸 | 中間証 お血 | 中くらい | 冷えやのぼせ、PMSや更年期の症状がある人 |
十味敗毒湯 | 中間証 | 中くらい | 赤く膿を伴った皮膚疾患や湿疹がある人 |
清上防風湯 | 実証 熱証 | ある | 赤ら顔でのぼせ傾向にあるニキビ症の人 |
白虎加人参湯 | 実~中間証 熱証 燥証 | 中の上 | 痒みや赤みがあり喉の渇きや多尿の傾向がある人 |
まとめ
酒さや酒さ様皮膚炎に処方されやすい漢方薬にも色々ありますが、主にはニキビやアトピーななど皮膚疾患にも処方されているものが多いです。酒さも皮膚病ですから当然と言えば当然かもしれません。
また、酒さはほてりやのぼせといった症状があることから「冷えのぼせ」や「冷え性」に有効な漢方薬もあります。
酒さを発症するのに更年期の女性が多いことから、更年期障害やホルモンバランスの調整に役立つような漢方も広く処方されています。
酒さといっても原因や体質は人それぞれですからどのような治療が有効かも人それぞれ。
冷え性の改善で免疫力がアップして酒さ症状の改善につながる人もいれば、ホルモンバランスの調整が肌代謝の促進になって改善につながる人も。
免疫やホルモンという単一のものだけでなく、それらが複合的に絡み合って酒さの原因になっていることも多いと思います。
漢方薬は調剤によってそういった複合要因にもアプローチできる可能性があります。漢方医に調剤してもらうとなると金額的にもかなりかかる可能性がありますが、体質に合えばかなりの効果が発揮できるとも考えられます。
漢方薬の理想的な使い方としては、自分の体質にぴったり合うものを、季節や症状に合わせて調剤してもらうというのが理想ではあります。
一般的に販売、処方されている漢方薬でも体質に合えばそれなりの効果は期待できますので、酒さ治療で漢方薬を検討している方は、ライフスタイルやかけられる金額などによって自分に合った漢方治療を適切に選んでいきましょう。