酒さ様皮膚炎ではステロイドを止める必要がありますので、症状の改善のために塗り薬を使いたい場合は非ステロイド系の外用薬を塗る事になります。
現在の皮膚科治療ではステロイドが使用されるのが常で、非ステロイド系の塗り薬はあまり一般的ではありません。
その中でも使用されやすいのが亜鉛華軟膏や亜鉛華単軟膏(サトウザルベ)というものです。
今回はその亜鉛華軟膏がどのような働きを持ち、酒さよう皮膚炎の肌にはどう用いたらいいのかを見ていきたいと思います。
もくじ
亜鉛華軟膏とは
亜鉛華軟膏はステロイド登場以前から炎症を鎮めるために使われていた薬です。古くから使用されていますので使用実績も多く、信頼性の高いお薬です。
有効成分は酸化亜鉛で、どんな作用があるかというと
- 収れん作用
- 消炎作用(穏やか)
- 患部保護
- 浸出液を吸収し乾燥させる
といったものです。
毛細血管を収縮させ、皮膚を保護しながら傷口から出てくる液を乾燥させる事によって皮膚の再生を促します。
消炎作用は穏やかですが、その分長期に渡って使用しても安心な点はステロイドと大きく違う部分です。
保湿剤ではなく保護剤としての意味合いが強い塗り薬です。
亜鉛華軟膏が効果的に働く場合とは
亜鉛華軟膏には浸出液を吸収し、乾燥させる働きがありますので
- 脱ステロイド
- おむつかぶれ
- あせも
などで効果を発揮します。
脱ステロイド時には分泌されるリンパ液を吸収しながら皮膚を保護してくれるため、リンパ液の分泌が多い脱ステロイド初期に効果的です。
また、おむつかぶれやあせもの主な原因は湿気です。あせもは汗、おむつかぶれは尿などを吸収、乾燥させ皮膚を保護してくれます。
穏やかではありますが炎症を抑える働きがあるため、脱ステロイドやおむつかぶれなどの炎症もやわらげてくれます。
亜鉛華軟膏の使用方法
亜鉛華軟膏の使用方法ですが
通常、症状に応じ、1日1~数回、患部に塗擦又は貼付する。
とあります。
そのまま塗布してもいいのですが、場所によってはガーゼに塗った上でそのガーゼを患部に貼ります。
ガーゼだと亜鉛華軟膏の油分が染み出て衣服を汚す場合がありますので、リント布という薬を塗った後に患部を保護するための布を使用する場合もあります。
亜鉛華軟膏は基本的に厚塗りが推奨され、パテを塗るようにべったりと塗ります。布を使用して塗布する場合はヘラなどでたっぷりと塗り広げてから貼ります。
重層療法
重層療法とは2種類の軟膏を塗り重ねる方法です。
患部に別の軟膏を塗った上で、布やシートに広げた亜鉛華軟膏を貼ります。主にはステロイドと亜鉛華軟膏を重ね塗りする場合に用いられます。
重症の場合に良く使われるようで、じゅくじゅくとただれた湿疹部を保護しつつ浸出液を亜鉛華軟膏が吸収してくれます。布で覆いますので患部が密閉された状態になり、ステロイドの吸収率も上がります。
ステロイドの吸収率を上げるやり方になりますので、短期間にとどめるなどの注意が必要となります。
基本的には重症の場合に短期間でのみ行います。自己判断で行わず、医師の指示に従って行ってください。
酒さ様皮膚炎の場合には脱ステロイドを行わなくてはいけませんので、重層療法でステロイドを塗ってはいけません。
亜鉛華軟膏は取れにくい
亜鉛華軟膏はべったりと皮膚につき非常に取れにくいので、拭き取り用のオイルが同時に処方される場合も多いようです。石けんで洗っても皮膚に残り、なかなか落ちません。
オリーブオイルなどのオイルをコットンに染みこませ、軟膏を塗った部分を優しく拭き取るといいです。
それでも肌に残ってしまった分は無理にふき取らずに肌への摩擦を避けてください。
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の違い
亜鉛華軟膏には「亜鉛華軟膏」と「亜鉛華単軟膏(サトウザルベ)」があります。亜鉛華単軟膏は「サトウザルベ」という名前でも親しまれています。
亜鉛華単軟膏とサトウザルベはほぼ同一のものですが基材がダイズ油かナタネ油かが違います。ダイズ油が亜鉛華単軟膏、ナタネ油がサトウザルベです。
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏はどう違うかというと、主に以下の2点が違います。
- 酸化亜鉛の配合量
- 基材
有効成分の酸化亜鉛ですが、亜鉛華軟膏が20%配合なのに対し亜鉛華単軟膏は10%配合です。(サトウザルベには20%配合のものもありますがあまり知られていません)
また、亜鉛華軟膏はワセリンベースであるのに対し、亜鉛華単軟膏は植物油がベースになっています。
亜鉛華軟膏 | 亜鉛華単軟膏 | |
---|---|---|
配合量 | 20% | 10% |
基材 | ワセリン系(白色軟膏) | 植物油(単軟膏) |
基材詳細 | サラシミツロウ 白色ワセリン セスキオレイン酸ソルビタン(乳化剤) | ミツロウ ダイズ油またはナタネ油 |
その他成分 | 流動パラフィン ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤) | ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤) |
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の使い分け
亜鉛華軟膏の方が酸化亜鉛の配合量が多く、乳化剤(界面活性剤)が配合されているため吸水性が高くなっていますが、その分乾燥作用が強いです。乾燥状態を長期間続けると皮膚にダメージを与えます。
亜鉛華単軟膏は植物油ベースの「単軟膏」という基材が用いられており、界面活性剤を含みません。酸化亜鉛の含有量が少ないため、あまり乾燥させたくない場合には亜鉛華単軟膏が選ばれます。
このような事から症状初期の浸出液が多い場合には亜鉛華軟膏を用い、浸出液が収まって肉芽形成期になってきたら亜鉛華単軟膏に切り替えるという使い分けがされます。
症状の強い時は亜鉛華軟膏、少し治まってきたら亜鉛華単軟膏と覚えておけば良さそうですね。
酒さ様皮膚炎と亜鉛華軟膏
亜鉛華軟膏を効果的に使えるのは発症直後の脱ステロイド期間です。
酒さよう皮膚炎でも顔のリンパ液に悩まされますので、そういった期間に使用するとステロイドの離脱症状が少し楽になります。
赤ら顔と亜鉛華軟膏
亜鉛華軟膏で赤ら顔が改善したという口コミを見かける事があります。これは亜鉛華軟膏の収れん作用がいい方向に働いていると考えられます。
酸化亜鉛の収れん作用は毛細血管を収縮させます。
酒さ様皮膚での赤ら顔の原因は、ステロイドの副作用による毛細血管の拡張と、皮膚萎縮によって肌が薄くなってしまった事です。
拡張してしまった毛細血管を収縮させる働きがありますので、結果として顔の赤みの改善に繋がります。
酒さ様肌へ亜鉛華軟膏を用いる時の注意点
消炎作用もあり、収れん作用で赤みの改善にもつながる亜鉛華軟膏ですが、酒さ様皮膚炎の肌に用いるには注意が必要です。
亜鉛華軟膏には消炎作用や収れん作用の他にも肌を乾燥させる働きがあります。
この乾燥作用が酒さ様肌を悪化させる可能性があります。浸出液が収まってくれば、次の段階としては皮膚のバリア機能を戻すために保湿をした方が改善しやすいからです。
保湿で熱がこもって乾燥が促進されてしまう場合は何もしないことを選択するべきであって、わざわざ乾燥作用のあるものを用いるべきではありません。
亜鉛華軟膏で症状の改善が進まない場合は塗るのをやめ、次のステップへと進んだほうが良いと考えられます。
まとめ
亜鉛華軟膏は非ステロイドの外用薬という事で、酒さ様皮膚炎でも塗れる数少ない軟膏です。
但し使いかたを誤ると却って症状が悪化したり、せっかく改善してきた肌が後退してしまったりします。
酒さ様皮膚炎は、脱ステロイドによって短期間で肌状態が大きく変化していきます。全ての期間で使える万能なアイテムというのはなかなか見つかりません。
非ステロイド系の軟膏で脱ステロイド中にも塗れるものと言えば、他には『紫雲膏』のような漢方軟膏があります。
自分の肌状態が今どのような状態なのかを見極める事によって、現在の肌状態を改善できる最適なアイテムを見つけやすくなります。
亜鉛華軟膏であれば、収れん作用や消炎作用がもたらすプラスの働きと乾燥作用がもたらすマイナスの働き。自分の現在の肌にはどちらの効果が大きいかを見極めながら使っていく事が大事です。
同じ酒さ様皮膚炎でもある時期にはプラスの働きをしていたものが、その時期を過ぎるとマイナスの働きになる事は良くあります。
どうしてそういう事が起こるのかを知っておくことによって、アイテムを切り替える判断基準が明確になり、自分の肌状態を知るきっかけにもなります。色々な視点を持って現在の肌状態に合ったアイテムを適切に選んでいきたいですね。
コメント
ろーざさん、こんにちは(^ー^)
育児奮闘中だと思いますが、お肌や体調いかがですか?
私はお肌辛い(T_T)
昨日一ヶ月ぶりに、皮膚科へ受診しました。抗生剤を止めて2週間ほどたったら、やっぱり、悪化しました。痒みぶつぶつを訴えたのですが、「何もしないほうがいいし、抗生剤ももっと悪化したら出します。」結局ビタミン剤と漢方34番で28日ぶんの処方…………(・・;)肌カサカサ粉ふきなのですが、保湿すると悪化するし…( ´△`)
体質改善が一番で、確実なのでしょうか?
なが〜いなが~い道のりです。
たまさん、こんばんは!
睡眠不足で肌状態は一旦最悪になりましたが、最近は持ち直してきました。
ただ、睡眠不足と不規則な食事による栄養バランスの悪さから顔の赤みが増しやすくなってます(T-T )( T-T)
いつもお気遣い頂いてありがとうございます!
抗生剤を止めると菌を殺してくれていたものがなくなりますので、どうしても一旦悪化します。
とは言え、使い続けると耐性菌の事も懸念されますので使い続けることができないのも現状です。
たまさんのドクターは信頼性の高い治療を行っているように思います。
そのお医者さまが抗生剤の使用をしないと判断されているのなら、最悪の状態は脱したと見ていいと思いますよ。
自分ではわからなくても、実は炎症の度合いが軽くなったりしています。毎日見ていると気付きにくいんですよね。
ひどい状態の時って全然良くなっていないように感じるのですが、実は目に見えない肌の奥で強い肌が作られています。
ビタミン剤や漢方は今の肌だけでなく、数ヵ月後の肌を強くするためのものでもあります。
カサカサ粉ふきはベビーオイルやマッサージクリームでかるーくマッサージすると少し気分が晴れますよ。
保湿で悪化する段階の粉ふき肌は肌内部の炎症が治まりきっていませんので、あまりやりすぎないように注意してくださいね。
何もしない方がいいのはとてもひどい状態を抜け出すまでの辛抱です。
一番辛いときだと思いますが、ここを抜けるとぐっと楽になります。がんばり過ぎない程度にやり過ごしていきましょうo(-`д´- o)
お体どうですか?育児疲れされてませんか?
わたしは、4日前から、微熱が続いており、しんどいです。
今月の3日から抗生剤のミノマイシンを飲み続けていたんですが、それの副作用じゃないかと思っています。
微熱がでてからは、ミノマイシンはストップしています。
微熱がでると、顔が火照るから、辛いです。
酒さのことで、精神的にもやんでしまい、肉体的にも、もう限界な気がしてきて。
辛いですね
みゅうみゅうさん、こんにちは!
育児疲れはまとめて寝れないのが一番辛いですね。
お気遣い頂いてありがとうございます!
熱が出ると顔にも負担がかかっちゃいますね。
アイスノンで冷やすと気持ちいいし少しは楽になるかもしれません。
微熱だと寝込むわけにもいかなかったりするので、地味にだるい状態が続いてしまいますよね(T ^ T)
抗生剤の副作用かどうかは次回通院された時に良く相談なさってください。
副作用が激しいようでしたら別の抗生剤に変更してもらう方がいいかもしれません。
身体がきついとあれこれ考えてしまいますが、まずは熱を下げる事を優先してくださいね。
辛かったら開き直って寝てしまって、身体の回復を優先するのもアリです。
くれぐれもお大事になさってください!