ビタミンC誘導体と言えば、肌に塗るとアンチエイジング作用や美白作用があり、炎症を抑制する効果が期待できる上、皮脂を抑えたりもしてくれる優秀な成分。
一方、アスコルビン酸というビタミンCでは、浴槽の塩素除去ができたりそのまま食べることもできます。
酒さや酒さ様皮膚炎の方は皮膚が弱っていますので水道の塩素程度でも肌刺激になってしまうことも多くあります。
そのためアスコルビン酸を使用した浴槽の塩素除去や、水道やシャワーヘッドの塩素除去を行うことによって肌刺激を減らせる可能性があります。
このような記事を書いたところ、こんな質問を頂きました。
「お風呂に入れるアスコルビン酸を手作り化粧水に入れたら、ビタミンC誘導体の化粧水になりますか?」
塩素除去用のアスコルビン酸はコスパがものすごく良くて、塩素除去のためだけに使うと年単位でもちそうなくらいですよね。そのため他に再利用したくなるのも分かります。
でも結論から言いますと、残念ですが、なりません。
同じビタミンCでも、肌に塗るためのビタミンC誘導体と塩素除去を行うためのビタミンCは、違うものだと考えて下さい。
この辺りがちょっと分かりにくかったですよね。塩素除去ばかりに頭が向いて、手作り化粧水用のビタミンCの説明をあまりしていなかったように思います。
ということで今回は、ビタミンCでもビタミンC誘導体や進化型ビタミンC誘導体(APPS)など、色々な種類のビタミンCの違いについて、ちょっとまとめてみました。
もくじ
ビタミンCの種類
ビタミンCの種類は大きく分けて3つあります。その中の一つであるビタミンC誘導体はさらに水溶性と脂溶性に分かれます。
- ビタミンC
- ビタミンC誘導体
- 水溶性ビタミンC誘導体
- 脂溶性ビタミンC誘導体
- 進化型ビタミンC誘導体(APPS)
なんか、名前からしてもどんどん進化してる印象がありますね。
このうち肌に塗るために使われるのは下の2つ。ビタミンC誘導体や進化型ビタミンC誘導体(APPS、アプレシエ)というものです。
ビタミンC(アスコルビン酸)
湯船の塩素除去でご紹介したアスコルビン酸はただのビタミンC。Lアスコルビン酸とか、アスコルビン酸Kとか記号がつくことがありますが、あまり気にしなくていいです。
食品添加物として酸化防止剤に使われるほか、ほとんどの商品はそのまま食べることもできます。
食べることができるタイプは手軽にビタミンCを補給できますので、湯船の塩素除去で余ったらそちらに流用する方がお勧めです。
ドラッグストアで入手できるのは200gで1,000円~2,000円程度のものが多いでしょうか。日本薬局方の基準に沿ってきちんと検査されていて、実はこれでもアスコルビン酸の中では高い商品です。
アスコルビン酸の構造は単純なので検査されているかどうかなどにこだわらなければ非常に安価で、1kgで1500円程度で買うこともできます。
お風呂の塩素除去にしか使わないならこんなにいりませんが、塩素除去シャワーヘッドによってはビタミンC粉末をそのまま補充するようなタイプもあるらしいので、そういった場合には便利ですね。
ビタミンC粉末(アスコルビン酸)は肌に塗れない
アスコルビン酸のビタミンC粉末は、そのまま肌に塗ると刺激が強いです。塗っても肌に馴染んでいかないため、角質層まで届きません。
また、アスコルビン酸は性質が安定せず、水に溶けるとすぐに分解し始めます。こういったことから肌に直接塗ったり、手作り化粧水などにするには向きません。
ビタミンCが手作り化粧水の原料になるというのは間違いではないのですが、手作り化粧水に使うのはビタミンCに安定性処理を施したビタミンC誘導体の方。
肌に塗るのはビタミンC誘導体、口に入れるのがビタミンC、という覚え方をしておけばいいかと思います。
ビタミンC粉末を飲む
こういったビタミンC粉末は、サプリ感覚でそのまま食べたり水に溶かして飲んだりしてもいいです。カプセルや錠剤になっているサプリよりも自然に近い気がしますね。
日本薬局方基準の商品は、服用する量として1gを1回とか2回とか記載されていますね。一日1000mg~2000mg。
ビタミンCは水溶性ビタミンで相当の大量摂取を行っても過剰摂取は起こらないとされています。こういったことから日本ではビタミンCの上限量が定められていません。
ビタミンCは飲んでも美白対策やシミ対策、免疫力の向上などが見込めます。余ってお困りの場合は、飲んだり食べたりしつつも湯船の塩素除去にも使ってみてください。
ビタミンCの効果的な飲み方
ビタミンCを飲む場合、一番お勧めなのは一日数回に分けて摂取すること。これはビタミンCに限らず、他のビタミン剤やお薬などでも効果的な飲み方です。
ビタミンCは水溶性ビタミンで大量に摂取しても尿や汗などから体外に排出されてしまいます。分けて飲んだ方がビタミンCの血中濃度が一定になり、排出もされにくいことから一番効果的な飲み方です。
また、ビタミンCは元々食事から摂取するものです。そのため、どのタイミングで飲むか迷ったら食事の時に摂取するのが自然で、飲み忘れ防止にもなります。
もし何度かに分けるのが面倒であれば、寝る前に飲むのが効果的。
寝ている間は排泄機能も低下し、トイレにもいかないので体内に長く留められます。血中濃度の低下もゆっくりになりますから、高い血中濃度のままビタミンCの吸収ができます。
ビタミンC誘導体
ただのビタミンCは安定性が低く酸化しやすいうえに水に溶かせばすぐ壊れますし、肌に塗っても角質層に届きません。
そこでビタミンCにマグネシウムやナトリウムをくっつけて、安定性を高めたものがビタミンC誘導体です。
ビタミンC誘導体にすることで酸化しにくく安定性が高くなり、皮膚に浸透しやすくなるというメリットがあります。
ビタミンCの美白効果は非常に高く、それだけ注目されていた成分ですので、どうにかして化粧品に応用しようとして開発されたんですね。
前述のビタミンCのように食べたり酸化防止剤として食品に添加されることはなく、口に入れる前提ではなく肌に塗る前提で作られています。
ビタミンC誘導体の肌への効果
ビタミンC誘導体の肌への効果はたくさんあり、美容にいいだけでなく皮膚の生成や炎症の抑制なども担います。
- 美白作用
メラニン色素の生成を抑えることから美白作用があります。抗酸化作用と併せてシミやくすみの予防にもなります。 - 抗酸化作用
活性酸素を除去しますのでアンチエイジング作用があります。 - 新陳代謝促進作用
コラーゲンやセラミドの生成を助けますので肌のターンオーバーを促進し、肌にハリを与えます。 - 皮脂分泌抑制作用
皮脂の分泌を抑制しますのでニキビをできにくくします。 - 消炎作用
皮脂の分泌を抑え活性酸素を除去することによって炎症を防ぎます。
ビタミンC誘導体、水溶性と脂溶性の違い
ビタミンC誘導体には水溶性と脂溶性があります。
水溶性ビタミンC誘導体は水に溶ける性質を持ち、さらっとしているため化粧水をはじめクリームやパウダーなど様々な化粧品に配合できます。
短時間で皮膚に吸収されるため即効性が高い反面、皮脂抑制作用が乾燥を招いたり敏感肌の刺激になったりします。
一方、脂溶性ビタミンCは油に溶ける性質を持ち、肌の皮脂と馴染みがいいです。クリームなど油分を多く含む化粧品に配合されやすいです。
持続性が高く肌への浸透率が良いため肌の奥まで浸透していきますが、水溶性ビタミンCほどの即効性はなく、じっくりと肌に浸透していき真皮まで到達します。
水溶性ビタミンC誘導体 | 脂溶性ビタミンC誘導体 | |
---|---|---|
性質 | 水に溶けやすい | 脂に溶けやすい |
即効性 | 高い | 低い |
効果時間 | 12時間持続 | 24時間持続 |
浸透力 | 角質層まで | 真皮まで |
肌刺激 | 乾燥や刺激を感じやすい | 乾燥や刺激を感じにくい |
ビタミンC誘導体、水溶性と脂溶性の見分け方
どんな種類のビタミンC誘導体が使われているかは、化粧品の成分名である程度判別できます。
化粧品の成分というのはメーカーによって細かい部分が違っていたりして、よっぽど成分に詳しくないと分からないものもあります。ビタミンC誘導体は何となくこんな感じの名前、というのが比較的分かりやすい部類かと思います。
水溶性ビタミンC誘導体
- リン酸アスコルビル
- アスコルビン酸グルコシド
- アスコルビルエチル
水溶性ビタミンC誘導体は大まかにこんな感じの名前をしていて、誘導体にするための物質が何かによってさらに名前が分かれます。
例えば、マグネシウムならリン酸アスコルビルMg、またはリン酸アスコルビルマグネシウムとなりますし、ナトリウムを使っていればリン酸アスコルビルNa、またはリン酸アスコルビルナトリウムとなります。
***
脂溶性ビタミンC誘導体
- テトラヘキシルデカン酸アスコビル
- ステアリン酸アスコビル
脂溶性ビタミンC誘導体は、アスコビルに何となく長ったらしい名前がついたら脂溶性ビタミンと思えば良さそう。
色々な種類が開発されているようで、舌をかみそうですしとても覚えきれません。。。
手作り化粧水に水溶性ビタミンC誘導体
手作り化粧水などにビタミンC誘導体を使う場合、扱いやすいのが水溶性のものです。
水溶性で最も効果が高いと言われているのは、マグネシウムを使ったタイプのリン酸アスコルビルMgだと言われています。
肌刺激が少なく効果が高いため、多くの美容皮膚科でも使用されています。
また、ナトリウムを使ったリン酸アスコルビルNaはリン酸アスコルビルMgよりも効果は低く肌刺激を感じやすいものの、濃度を濃く配合できて扱いやすいためこちらも多くの美容皮膚科で採用されています。
つまり、手作り化粧水にビタミンC誘導体を使いたい場合、「リン酸アスコルビル~~」というものを選べばよいということになります。
水溶性ビタミンC誘導体の濃度
美容皮膚科などで使われるビタミンC誘導体化粧水は5%程度から10%の高濃度までさまざま。
5%程度から使われていることが多いため、濃度の一つの目安となるのが5%。
市販のビタミンC誘導体パウダーも、5%濃度を一つの基準点として作り方などが説明されている場合が多いです。
酒さや酒さ様皮膚炎で慎重に使いたい場合はもっと薄めて、3%程度から始めてみるのが安心ではあります。
原料は後から足して濃度を高くするのは大変です。薄めるのは後からでも水を足すだけでできますので、最初は濃い目の濃度で作って肌刺激を見ながら薄めていくと自分に合った濃度を見つけられます。
作った化粧水は4日~1週間程度で使い切るのが望ましいため、少量ずつ作るのが理想です。
進化型ビタミンC誘導体(APPS)
進化型ビタミンC誘導体とか、新型ビタミンC誘導体などと呼ばれるのがAPPSという新しいビタミンC誘導体です。アプレシエとも呼ばれます。
水溶性と脂溶性のメリットのみを再現し、さらに浸透力を高めた画期的なビタミンC誘導体です。
即効性と真皮への浸透力も併せもち、肌刺激や乾燥も少なく、水分にも油分にも良くなじむというまさにいいとこどりの性能。
浸透力に至っては水溶性ビタミンC誘導体の100倍とも言われています。
デメリットとしてはまだ原料の値段が高いことや、臨床データが少なく厚生労働省の認可が下りていないことが挙げられます。
臨床データは少ないものの認知度はかなり高いため、APPSを使った化粧水も手作りできます。
APPSはあまり高濃度に配合されることはなく、1%程度で作成されることが多いようです。
まとめ
浴槽の塩素除去に使用できるビタミンCと、化粧水に使用できるビタミンCは全く別物です。
同じビタミンCではあるため少々誤解をしてしまうようなことも多く、うちのサイトでもちょっと説明の仕方が悪かったかな、と反省しました。
飲んでも塗っても肌への効果が高いビタミンCですが、飲めるからと言って塗れるわけではありません。
塩素除去のついでに飲んでもよし、化粧水にビタミンC誘導体を取り入れてもよし、色々な使いかたがありますので気になる方はぜひ試してみてください。