ノンケミのクレンジングとして、キャリアオイルのみでクレンジングを行う、という方法があります。
界面活性剤を使用していないピュアなキャリアオイル(オリーブオイルやホホバオイルなど)のみでメイク落としを行うことができる、ナチュラルなクレンジング方法です。
このクレンジング法、ちょっとコツがいる上に通常のオイルクレンジングと混同されがちで、オイルでクレンジング=界面活性剤たっぷりで肌に良くない、というイメージがついています。
今回紹介するのは、界面活性剤を使用せずピュアなオイルのみでメイクを浮かし、クレンジングする方法。
一般的なクレンジングオイルとは異なり、界面活性剤による肌荒れや乾燥の促進を心配する必要がない代わりに、クレンジング後すぐに水で流せるというような手軽さもありません。
オイルによる保湿効果を得ながらメイクを落とすことができる上にノンケミなので、酒さや酒さ様皮膚炎のような皮膚疾患がある方にも向いています。
もくじ
クレンジングオイルが水で流せる理由
一般的なクレンジングオイルを使用すると
- クレンジングオイルを肌になじませる
- くるくるとマッサージ
- ぬるま湯で洗い流し
- 必要に応じてW洗顔
という手順をふむかと思います。
くるくるとメイクになじませたオイルが水に流せる理由こそ「界面活性剤」。
水と油は本来混じりあわないものですが、界面活性剤を使用することによってオイル状のクレンジング剤が水でさっと洗い流せるようになるのです。
キッチンにあるサラダ油でもオリーブオイルでも、手についてしまった時には水だけでは流せませんよね。そういった時にはお湯やハンドソープの力を借りて落とすかと思います。
クレンジングオイルが水でさっと洗い流せるのは、水と油を馴染ませて洗い落とせるような「界面活性剤」を使用しているからです。
界面活性剤は決して無条件に避けるべきものではありませんが、安いクレンジング剤には安価で洗浄力の強い界面活性剤が使用されています。
オイルクレンジングよりミルクやクリームが良いと言われる理由
ミルククレンジングやクリームクレンジングに比べると、オイルというのは大量の界面活性剤を使用しなければ水で流すことができません。
ミルクやクリームにも界面活性剤は使用されていますが、それはミルク状やクリーム状のテクスチャを作り出すための乳化剤としての役割も果たしています。既に乳化されているので、水に流すための界面活性剤も少量で済みます。
それに比べてクレンジングオイルは、油そのものを水に流せるだけの界面活性剤を使用しなくてはいけません。
ミルクやクリームは既に乳化済みなので乳化に使用した界面活性剤も失活(力を失う)していますが、オイルの場合は水に流すために入れた界面活性剤の力がフルパワーで残っています。
そういったことから、オイルクレンジングよりもミルククレンジングやクリームクレンジングの方が肌に優しいと言われがちです。
もちろんこれも商品による部分も大きく、肌負担の少ないアミノ酸系界面活性剤を使用したクレンジングオイルと肌負担の大きい安価な界面活性剤を使用したクレンジングミルクでは、前者に軍配が上がることも多いです。
顔を洗いすぎてはいけない理由
クレンジングをするのはメイクの汚れを落とすためですが、この時に皮脂を取りすぎてしまうと乾燥が進行し、却って肌荒れを促進します。
酒さや酒さ様皮膚炎の場合、肌が薄い上に炎症を起こしており、さらにバリア機能が弱くなっていますので、必要以上の洗顔は禁物。
赤ら顔や敏感肌でお悩みの場合でも、やはりバリア層の機能が弱くなっていることが多いので、皮脂を取りすぎない洗顔を心がけるべきです。
皮脂は天然のクリームとも言われており、自分の肌に一番相性の良い保湿成分であり皮膚保護成分でもあります。
日本人女性の大半はクレンジング→洗顔という工程を好みますが、洗えば洗うほど汚れと同時に肌にとって必要な皮脂も落としてしまう事も事実です。
キャリアオイルでクレンジングすることのメリット
キャリアオイルのように100%ピュアなオイルでクレンジングすると、汚れも皮脂も一気に取り去ってしまう「界面活性剤」を避けることができます。
クレンジングオイルで肌荒れが進行しやすいのは水に流せるくらいに大量の界面活性剤が主な理由ですが、キャリアオイルのみでクレンジングすることによってこのデメリットを完全に無くすことができます。
また、キャリアオイルでクレンジングすると、オイルの持つ保湿効果や栄養をそのまま肌に受けることができます。
そのため、洗顔後のしっとり感を残したまま汚れだけを落とすことができる上、オイルのもつ抗炎症作用や抗酸化作用を受けることができます。
オイルの中には馬油のように昔から火傷治療に使われるほど皮膚修復能力が高いものもありますし、酒さやアトピーのような皮膚疾患の保護に使われてきたものもあります。
キャリアオイルには様々な種類があり、オイルに含まれる脂肪酸や栄養素もそれぞれ。肌に合ったオイルでクレンジングすることで、界面活性剤を避けつつ抗炎症作用やアンチエイジングなどの効果も得ることができます。
さらに、全てのキャリアオイルには角質柔軟効果があります。エモリエント効果などとも称され、硬くなった角質を柔らかくし、皮膚に潤いと柔軟性を持たせてくれる作用です。
キャリアオイルでクレンジングした後は、しっとりとした洗い上がりと柔らかい肌を実感できることと思います。
キャリアオイルでクレンジングするデメリット
そもそも「汚れ」というメイク汚れや皮脂汚れなど「油で浮かすことができるもの」が大半です。
試してみると分かりますが、メイクした上からキャリアオイルを馴染ませていくとメイクはするするーっと落ちていきます。
最大の問題は、そのあと水に流せないこと。
そのまま洗い流そうとしても油ですからギトギトで、水を弾いてしまいます。そのままにしておけば汚れと馴染ませたオイルごと肌の上に残ってしまう事に。
オイルで浮かしたメイクや皮脂汚れは、そのままにしておけば酸化ダメージとなって肌荒れの原因となってしまいます。
そのため、オイルで浮かした汚れはきちんと洗い流さなくてはいけません。
キャリアオイルのみではこの洗い流しができないというのが最大のデメリット。
メイクと馴染ませたキャリアオイルを洗い流すためには洗顔が必要になります。
また、マスカラなどの濃いアイメイクはキャリアオイルのみでは落ち切らないこともあります。そういった場合にはポイントメイクだけ専用リムーバーで落としてからのキャリアオイルクレンジングになりますから、さらに手間がかかりますね。
キャリアオイルでクレンジングの方法
キャリアオイルでクレンジングするためには次のような工程を経る必要があります。
- 手のひらに好みのオイルを出す
(500円玉大くらい) - 両手にオイルを広げ、少し温めたら顔に馴染ませる
- 顔にオイルを広げながらくるくるとマッサージ
(指の腹を使ってゆっくり優しく) - ティッシュまたは蒸しタオルで油分を吸い取る
(Point! ここを飛ばすと洗顔で落ちない)
(決してこすらない) - 洗顔
(純石けんでの洗顔を推奨。洗顔フォームは×)
基本的にゆっくりと優しくオイルを馴染ませながらクレンジングし、余分な油分をティッシュや蒸しタオルで吸い取ってから洗顔、というステップになります。
クレンジングオイルをつるんと馴染ませたらささっと水で流せばOK、というようなクレンジング法に比べてはるかに手間がかかりますね。
手のひらに好みのオイルを出す
クレンジングに使うキャリアオイルは何でも良いので、肌に合うオイルを選びましょう。キャリアオイルに好みのエッセンシャルオイルを数滴プラスして、さらなる効果アップを狙っても○。
馬油やシアバターのように寒いと固まってしまうようなオイルはちょっとやりにくいです。
それでも手のひらで温めれば溶けていきますから、シアバターが肌に合っている場合にはひと手間かけてクレンジングに使ってもOK。
また、酒さや酒さ様皮膚炎、赤ら顔や敏感肌のような肌トラブルに悩んでいる場合、キッチンにあるオイルを使うのはやめましょう。
オイルには精製度というものがあり、精製してあればあるほど不純物が抜けて肌に優しいものになります。不純物は栄養素でもありますので、逆を返すと精製しすぎたものは調理用のオイルに向きません。
使う量は500円玉大くらいが目安ではありますが、メイクの濃さや指すべりによって調節して下さい。
こすらずにマッサージできることが優先ですので、顔に伸ばしてみて摩擦感を感じるようならオイルをプラスしましょう。
両手にオイルを広げ、少し温めたら顔に馴染ませる
オイルを広げて温めるのは、オイルの伸びを良くするためと肌馴染みを良くするためです。
メイクを浮かせるために短時間のマッサージが必要になりますから、なるべく指に力が入らずオイルが伸びやすいよう、手のひらで温めます。
特に冬などの寒い時期はオイルも固くなっていますから、肌の上で温めながら伸ばしていくよりは手のひらで温めた方が肌負担も減り、クレンジングしやすくなります。
夏場などでオイルが十分に温まっている場合は、手のひらに広げてすぐ顔に馴染ませても構いません。
顔にオイルを広げながらくるくるとマッサージ
肌馴染みが良くなったオイルを顔に広げながら、くるくるとマッサージをしていきます。
指の腹を使って優しく行い、角栓を取ろうとゴシゴシこするのはやめましょう。
優しく丁寧に行っていても少しするとメイクが浮いてきますので、そうなったらクレンジング終了の合図。
一般的なクレンジング剤のように白く乳化させる必要はありません。
ティッシュまたは蒸しタオルで油分を吸い取る
ティッシュや蒸しタオルで余分な油分を吸い取ります。
この工程を飛ばすと後の洗顔でものすごく苦労することになります。2度や3度洗っても油のギトギトが落ちきらず、却って洗いすぎになってしまいます。
使うティッシュは鼻セレブのような質の良いものを選ぶといいですが、基本的はふんわりと乗せて油分を吸い取るだけなので普通のものでも構いません。
ここで少しふき取りたいな、と思ってしまう方は質のいいティッシュを使ってください。
ティッシュは1枚で済ませようとせずに数枚使って、しっかりと油分を落としておいてください。
蒸しタオルは500Wのレンジで1分程度で作れます。
ティッシュに比べて蒸しタオルの方が油分が取れますので、お好みに合わせて調節を。蒸しタオルは熱ければ熱いほど油分が取れますが、その分肌も痛めやすくなります。
蒸しタオルの程度は季節やその時使用しているオイルの種類などによっても変わりますので、自分にとって最適なバランスを見つけましょう。
大事なのは、決してこすらず熱すぎるホットタオルも避け、肌ダメージにならないように油分を吸い取ること。
ここのステップが一番気を使う上に、ティッシュを何枚か使ったりホットタオルを作ったりと面倒だと思います。
洗顔
最後に洗顔をして終了です。
この時の洗顔には界面活性剤を使用している洗顔フォームなどではなく、純石けんでの洗顔がおススメ。
せっかくノンケミのクレンジングをしようとしているなら、ここも徹底しておきたいところ。
純石鹸はアルカリ性の刺激が強く、使い続けると乾燥が進行しやすいという特徴がありますが、純石鹸の界面活性作用は水に流すだけで失われるという特徴もあるため、肌残留の懸念がありません。
純石鹸はアルカリ性という特徴もある上石けんとしての洗浄力は強い部類ですので、メイク汚れがない肌に使うには不安点も多いです。
ただ、キャリアオイルクレンジング後の洗顔としてなら、オイル汚れが良く落ちた上に石けんの界面活性剤が残留しませんので最適だと思います。
石けんを選ぶ際の注意点
注意点として、純石けんではないものを「純石鹸」だと思って使っている方がとても多いです。純石けんというのは成分が「石けん素地」か「カリ石けん素地」のみのものですが、多くの自然派石けんでは石けん素地にさらなる成分をプラスしてあります。
自然派石けんという名目で売られているので純石鹸と勘違いしてしまう人も多いのですが、石けん素地に他の成分をプラスしてある石けんはプラスの成分が肌ダメージになっていることも多くあります。
そういったことを避けるためにも、キャリアオイルでクレンジング後の洗顔にはできれば純石けんを選びましょう。
もちろん、他の成分がプラスしてある石けんでも、肌に合っていることが分かっていれば使ってもOK。エッセンシャルオイルを足してある馬油石けんや保湿成分を足してある自然派石けんなどは良くありますが、下手な洗顔フォームを使うよりはそちらの方がよっぽどいいかと思います。
また、ドラッグストアなどの純石鹸が強すぎて石けん洗顔に躊躇される方は、コールドプロセスの純石けんを選んでみて下さい。
ドラッグストアのものと比べると少しお値段は高くなり泡立ちも悪くなりますが、天然の保湿成分がたっぷり残っていて肌刺激も少ないという特徴があります。
ナイアードのアルガン石鹸はコールドプロセスの純石鹸として有名ですね。ナイアードはガスールというモロッコの泥で有名ですから、名前を聞いたことがある人もいると思います。
40g程度のサイズなら500円以下で購入できますので、ちょっと試してみるにも最適です。
クレンジングに使えるキャリアオイル色々
クレンジングに使用でき、入手も簡単なキャリアオイルを紹介します。クレンジングに使いますので比較的大容量かつ安価なものの方が向いています。
オリーブオイル
安価で入手しやすいため、初心者向けのキャリアオイル。
肌に合えばこれ一本でOK。食用としても有名なため、入手に困ることはありません。
飲む美容オイルとしても注目を浴びていて、ビタミンEを豊富に含むため抗酸化作用に優れ、酸化しにくいのも嬉しい点。
オレイン酸が豊富なため、粘性が高く重たいテクスチャ。乾燥肌には向きますが、脂性の場合は毛穴のつまりやニキビの元になることもあるので要注意。
「オリブ油」という名称の医薬品グレードが、近所のドラッグストアで入手できます。
ホホバオイル
全ての肌質に合うため、使いやすい初心者向けオイル。
保湿力と浸透性に優れており、さらりとした軽めのテクスチャで使いやすいオイルです。
酸化安定性も高く長期保存にも向いているので、クレンジングオイルとしての使用にも最適。
厳密には植物油脂ではなく液体ワックス(ロウ)の一種。
まれにアレルギーを起こす人もいるので要注意。
きちんとコスメグレードに精製しながらも栄養素をしっかり残したゴールデンホホバオイルは、ホホバオイルの中でも効果が高く王道です。
NATURAL ORCHESTRAのゴールデンホホバはオーガニックで品質も良好。
グレープシードオイル
全ての肌質に合うとされていて、初心者向け。
リノール酸が豊富なため軽くさっぱりとしたテクスチャで、浸透性に優れています。
肌馴染みが良く広がりやすいためマッサージオイルとしても良く用いられており、クレンジングにも向きます。
リノール酸が豊富なためオリーブオイルやホホバオイルに比べて酸化しやすいですが、ビタミンEが豊富なためある程度の酸化安定性はあります。
粘性が低くサラサラとしたオイルなので、リッチなテクスチャが苦手な方にも。
スイートアーモンドオイル
全ての肌質に合いやすい、初心者向けのオイル。
やや粘性のあるテクスチャでゆっくりと浸透していき、作用が穏やかなので敏感肌や赤ちゃんにも安心して使えるという特徴があります。
どの肌タイプにも使え、顔や体の部位を問わずに使用できることからマッサージにも適しています。
オレイン酸、リノール酸、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでおり、数あるキャリアオイルの中でもマイルドで最も良く使われる代表的なオイルです。
アプリコットカーネルオイル(あんず油)
全ての肌質に合うため、使いやすいキャリアオイル。
サラサラとした質感で滑りが良く、ビタミンやミネラルを豊富に含むためフェイシャルマッサージに最適。優れた皮膚軟化作用があり肌の再生能力も高いため、クレンジングにも向いています。
スイートアーモンドオイルによく似た性質を持ちますが、より粘性が低くサラサラとした使い心地です。
また、イボに効くという言われており、イボ取りのオイルとしても有名。
オレイン酸の含有量が約65%と高いため高保湿で肌の再生能力にも優れますが、リノール酸も30%程度と豊富に含んでいるため使い心地がサラッとしており浸透力も高いという特徴があります。
生産量が少なく、価格はやや高めとなっています。
セサミオイル(ごま油)
セサミオイルはごま油のこと。アーユルヴェーダで良く使われています。
粘性のあるリッチなテクスチャで、オリーブオイルの性質と似ています。
ゴマ特有の成分であるセサミンやセサモリンから形成される天然の抗酸化成分が豊富で、酸化安定性が高いです。
抗酸化作用が高いため若返りのオイルとしても有名で、アンチエイジングオイルとして注目を集めています。
また、皮膚への浸透力が高く肌の再生に貢献するほか、体内の毒を出すデトックス効果も期待できます。
ややリッチなテクスチャになるので乾燥肌や年齢肌に向き、サラッとしたテクスチャが好みの方には向きません。
まとめ
酒さや酒さ様皮膚炎のようなトラブルを抱えていると、どうしても界面活性剤を避けてみたり、シンプルなスキンケアを目指してみたりと色々な試行錯誤があると思います。
その中でも100%ピュアなキャリアオイルのみでのクレンジングは、覚えておくと色々なシーンで使うことができます。
オリーブオイルを始め植物油脂というのはどこでも入手できるため、急な外泊や用事のときでも使った事もないクレンジング剤を買わなくて済みますし、普段のお手入れとしても十分使えます。
ミルククレンジングで落ち切らないようなメイクでも、キャリアオイルでのクレンジングならかなりの部分まで落としてくれます。
クレンジング剤ならば商品を選ぶ必要があるところ、キャリアオイルならば合うオイルを見極めなくてはいけませんが、肌に合うオイルというのは把握しておくと何かと楽です。
クレンジングの方法の一つとして、参考にして頂ければ幸いです。