石けんは無条件に無添加だというイメージがありますが違います。
石けんにも純石けんと合成石けんがあり、後者の合成石けんは合成界面活性剤やその他の香料、防腐剤などが入っている事もあります。
また、「無添加」という表示があっても、実際は純石けんでないことも多くあります。
見かけ的に石けんの形をしているからと言って、無添加で純なものとは言えないのです。
純石けんはかなり安価な値段で、ドラッグストアでも入手できる優れたアイテム。石けんシャンプーで使う人もいますので、どんなものが無添加なのか知っておきましょう。
純石けんにはどんな商品があるかだけ手っ取り早く見たい方は以下の記事もご覧ください。
もくじ
純石けんの見分け方
純石けんを見分けるには成分表示を見るのが簡単です。純石けんの成分表示はとてもシンプルなので、長ったらしい化学物質の名前を覚える必要はありません。
覚えておきたい純石けんの『成分』
覚えておきたい成分名は以下のものだけ。
- 石けん素地
- 純石けん分
- 脂肪酸ナトリウム
- 脂肪酸カリウム
最後の脂肪酸ナトリウムやカリウムだけ???となるかもしれませんが、これは純粋な石けん成分のことです。
石けんは植物や動物の油脂から作られますが、その油脂をナトリウムやカリウムで煮たものが『脂肪酸』。煮るものにナトリウムを使えば脂肪酸ナトリウム、カリウムを使えば脂肪酸カリウムです。
純石鹸というのは、この石けん成分が98%以上である必要(JIS(日本工業規格)では93%以上)があります。つまり、成分のほぼ全てが石けん成分です。
これらは名前や呼び方が違うだけで、全て純粋な『石けん』という成分を表しています。
成分表示のモデルとしては以下のようなものでとてもシンプル。
成分:石けん素地
※カリ石けん素地、などの表記も。
成分:脂肪酸ナトリウム
※脂肪酸Na、のように略記号が使われることも。
無添加物で有名なミヨシやシャボン玉の無添加石けんは、こういった表示です。
ミヨシ 無添加白いせっけん
食用グレードの天然油脂をまるごと焚き込み、6日間熟成させて作った天然せっけん。
石ケン素地
シャボン玉 浴用石けん
天然の動植物油脂を昔ながらのケン化法でじっくりと炊き上げた石けん。
石ケン素地
石けんの製造工程で発生することもある『グリセリン』
さらに、石けんの製造工程ではグリセリンが自然発生します。これは製造工程で取り除くこともありますし、取り除かずに石けんに入っていることも。
グリセリンは保湿成分として有名ですね。手作り化粧水の第1選択肢になるのもこのグリセリン。安全でしかも安価に購入することができます。
石けんの成分としてグリセリンが残っている場合、石けんの潤い成分となりますのでしっとりした洗いあがりになります。一方、グリセリンには水分を吸着する役割があるため、溶けやすい石けんになってしまいます。
硬めに仕上げるか保湿成分を残して仕上げるか、メーカーの好みによるところ。
純石鹸であっても、この『グリセリン』が成分として表示されている事もあります。その場合、水分も同時に残っている事が多いので、『水』という表示がされます。
成分表示のモデルとしては以下のようなもの。
成分:脂肪酸ナトリウム、水分、グリセリン
これも成分名は3つありますが全て製造工程で生じるものですので、純石けんということになります。
ねば塾の『白雪の詩』という石けんがこれに当たります。
純石けんと化粧石けん
石けん成分、水、グリセリン以外の原料が入った石けんは、純石鹸ではなく『化粧石けん』という分類になります。
定番すぎて無添加石けんだと誤解されている石けんに、牛乳石けんがあります。
『青箱』の通称で有名な青い牛乳石けんの成分を見てみると。
石ケン素地、香料、乳脂(牛乳)、水、ステアリン酸、酸化チタン、EDTA-4Na
石けん素地と水以外にも、名前の由来ともなる乳脂や香料、ステアリン酸、酸化チタン、EDTA-4Naといった成分が並びます。
ちなみにこの流れだと牛乳石けんを否定しているように聞こえますが、牛乳石けんはシンプル処方で香りも楽しめるせっけんです。少し気になる成分は入っていますし純石鹸という定義からは外れますが、割と好きな石けんです。
牛乳石けんにもちゃんと純石鹸があり、こちらの成分は石けん素地のみです。
石ケン素地
石けんに加えられる成分
石けんに加えられる成分は保湿や洗い上がりを調整するために加えられるほか、メーカーによってはニキビや肌荒れを防ぐ有効成分が加えられたり美白成分が加えられたりもします。
こういったものの分類は全て「化粧せっけん」であって、純石鹸ではありません。
成分が増えるに従って肌が反応を起こす確率も上がるのは、石けんでも化粧水でも同じです。石けん以外に加えられる成分が肌に合えばいいですが、化粧石けんの中には肌の刺激になりやすい成分が含まれている場合もありますので注意しましょう。
純石けんと洗濯用せっけん
純石けんは「洗濯用石けん」として売られている事も多くあります。身体に使うものは薬事法で規制され、化粧用の石けんとして厚生労働省の基準を満たさないといけません。
対して洗濯用に使う石けんを管理するのは経済産業省。化粧用の基準よりも緩やかです。
薬事法による認可を受けるためには手間や費用がかかりますが、その費用は当然商品価格に反映されます。
純石鹸というのは安価に販売できるものですから、そういった手間をかけることを避けて洗濯用せっけんとして販売されることもあります。
こういった商品でも「純石鹸」には変わりありません。顔や体も洗えますので覚えておくと便利です。抵抗のある人もいるかと思いますので、その場合は素直に身体を洗えると謳われている純石鹸を選んでください。
以下は純石鹸で有名なミヨシさんから出ている洗濯用の純石鹸。純石鹸メーカーも洗濯用せっけんを別に出していたりします。
「無添加」表示がアテにならない理由
石けんのパッケージに「無添加石けん」と書かれていると、何となく純石鹸のことだと思ってしまいますよね。
『無添加』の基準というのは各メーカーによってバラバラで、合成界面活性剤を入れてなければ無添加と言うところもあれば、旧指定成分を入れてなければ無添加、というところもあります。
肝心の「何が」無添加なのかは、「無添加」という表示だけでは分かりません。
ですから最近では○○フリーと謳う際にも「5つのフリー」や「7つのフリー」などのようにどれだけ無添加の数が多いかをアピールすることも増えました。
石けんに関していえば、化学合成したものを入れてなければ無添加とするメーカーから、純石けんのみを無添加と位置付けるメーカーまで様々。
純石鹸を探すときは、無添加という表示に惑わされず、成分表で見分けるようにしましょう。
まとめ
純石鹸での洗顔というのは宇津木式肌断食でもそうですし、皮膚科の医師が勧めてくることもあるような洗顔方法。
アルカリの刺激と強力な脱脂作用がデメリットではありますが、合成界面活性剤たっぷりの洗顔フォームよりはよっぽど肌に良いかと思います。
私はクレンジング1回のみの洗顔をお勧めしていますが、肌に合うクレンジング剤が見つからないくらいなら純石鹸で洗った方がマシ。
同じ酒さや酒さ様皮膚炎でも、脂性の強い方などは石けんのさっぱり感の方が向く場合もあるでしょう。その場合でも、要となるのは『純石鹸』。
宇津木式や皮膚科医が勧める時、しつこいくらいに『純石けん』にこだわるのには、純石鹸でないと余分な成分の干渉が入るからです。
純石鹸でなくても良いせっけんはたくさんありますが、まずは基準となる純石鹸を見分けられるようにしておき、その上で応用を効かせるようにしましょう。
また、純石鹸に限らず石けんは原料となる油脂や製法にこだわると、ワンランク上の体験ができます。もう少し突っ込んで石けんを選んでみたい方は、石けんの選び方も参考にして下さい。