「酒さ」と「酒さ様皮膚炎」。似たような名前、というよりほぼ一緒の名前です。どっちも同じじゃないの?と思われがちなこの2つの病気ですが、実は違う病気です。ややこしいですね。
今回は酒さと酒さよう皮膚炎の違いについて具体的におさらいしていきます。あなたの症状はどちらでしょうか。
もくじ
酒さと酒さよう皮膚炎の決定的な違い
酒さと酒さ様皮膚炎の違いは細かく言えば色々ありますが、一番直感的に分かりやすい違いは以下です。
- 酒さは原因不明の赤ら顔
- 酒さ様皮膚炎はステロイドの副作用
つまり、酒さは原因不明なのに対して酒さよう皮膚炎はステロイドが原因と、発症する要因が全く違います。
酒さと酒さ様皮膚炎の症状が同じ
原因は全く違うこの2つの病気ですが、酒さ様皮膚炎の症状は酒さの症状と似ています。
全くと言って良いほど同じ症状も引き起こされる為、ステロイドが原因の皮膚炎の方に「酒さ様皮膚炎」という名称がつきました。
酒さや酒さ様皮膚炎の具体的な症状を簡単にまとめると以下のようなもの。
- 赤ら顔、発赤
- 顔面のほてりや刺激感
- 毛細血管の拡張
- 皮膚萎縮
- ニキビのようなブツブツ
- 皮脂腺の拡大
全ての症状が同時に出るわけではなく体質や個人差によって症状の出方は様々ですが、ほぼ例外なく顔の赤みには悩まされます。
赤ら顔の出方は人それぞれ
顔の赤みの出方も人それぞれで、毛細血管が浮き出たように見える人もいれば、全体的にぼんわりと赤くなる人も。中にはブツブツの部分だけ赤いなんて人もいます。
特徴的なのは目の周りは白くて、顔の下半分が赤いこと。ちょうどパンダのように、赤いところと白いところの境目がくっきりとしている場合が多いです。
治療法の違い
症状が似ているため治療法も似通っているのですが、違う部分もあります。
酒さの一般的な治療法
酒さは原因が不明である事が多く、劇的に改善できるようなお薬がありません。
また、日本人より欧米人の発症率が高いことから日本ではあまり研究が進んでいません。有効だと言われている薬も認可が下りていなかったり、個人輸入が必要だったりします。
このような背景から、酒さの治療ではまずビタミン剤や漢方薬で体質の改善を図りつつ、個人の悪化因子の特定に努め、肌を刺激しないように過ごす、という非常に消極的な療法が取られます。
体質の改善や肌を刺激しないように努めるのは決して悪いことではありませんが、そういう方法しかないというじれったい側面もあります。
酒さの治療において一番大事なのは自分の体質を把握して酒さ症状をコントロールすることであり、食べ物や飲み物、スキンケアなどの生活習慣などを見直して少しでも症状が悪化しないように努めます。
その中で寛解(かんかい)といって、ほとんど酒さ症状が出ない状態に持っていく事も可能です。
ただし、原因不明の皮膚疾患と言われているだけあって、原因の特定も困難です。
原因が人それぞれな上に複合的に絡み合っている場合も多く、重度の酒さ患者さんほど原因の特定には労力が必要です。
酒さ様皮膚炎の一般的な治療法
対して酒さ様皮膚炎は、ステロイドというはっきりとした原因があります。そのため酒さ様皮膚炎の治療では、まず脱ステロイドを行います。
症状が重く、ステロイドの離脱作用があまりにも激しい場合には弱めのステロイドを塗りながらの減ステロイドという治療になる場合もありますが、最終的に目指すのは「ステロイド断ち」です。
ステロイドを辞めると激しい離脱症状が起こり、これが患者を非常に苦しめます。
ステロイドの離脱症状として火傷のような激しい炎症やニキビ状の発疹、膿疱などの膿が発症部位に多発します。浸出液と言ってリンパ液のようなものが流れ出てくることもあります。
また一度治まったと思われた離脱症状がぶり返すこともあり、リバウンドなどと呼ばれています。一般的にリバウンドは回を重ねるごとに軽くなっていきます。
酒さの発症部位は顔ですが、酒さ様皮膚炎の離脱症状は顔の中でもステロイドを塗っていた部分にのみ起こります。
酒さ様皮膚炎の治療法は、ステロイドの離脱症状と戦いながら酒さで行われているような治療法も行っていく、というのが一般的です。
治療の目安はとにかく脱ステロイドの症状を落ち着けることが最優先ですが、ステロイドを塗っていたという事は元々持っている皮膚疾患があるという事でもあります。
脱ステロイドを行いながら元の皮膚疾患の治療をどう行っていくか、担当医師とよく話あっておく必要があります。
また、ステロイドの離脱症状が治まっても顔の赤みは残ることがあり、そうなると酒さの治療法と全く同じ治療法が取られます。
酒さの素養を持っている人が酒さ様皮膚炎になりやすいという説もあるため、酒さ様皮膚炎だからと言って酒さの治療と無関係という事はありません。
酒さも酒さ様皮膚炎もすぐには治らない
酒さよう皮膚炎の場合、ステロイドの離脱症状による炎症が治まってきても顔の赤みはなかなか取れません。膿やリンパ液などは出なくなっても、酒さと同様の赤ら顔は続きます。
ステロイドの離脱症状が軽くなってくると、見た目だけでは酒さなのか酒さ様皮膚炎なのかの判断がつきません。
何らかの事情で病院を変える場合には、「酒さ様皮膚炎の赤みが残っている状態」なのか、ステロイドは一切使っていなかったけど「酒さになってしまっている」のかはちゃんと伝えるようにしましょう。
どちらであっても治療内容はあまり変わりませんが、経緯をお医者さまに伝えておくのは非常に重要です。また、どちらの場合も治療は長期的に取り組んでいく必要があります。
どちらの病気の方が治りやすい、というような事はありません。原因は別でも症状は同じであり、残念ながら酒さ様皮膚炎ならステロイドさえ断てばすぐに治るという訳ではありません。
また、酒さ様皮膚炎を発症してそのまま酒さに移行してしまう、という事も十分にあり得ますし、そもそも酒さ様皮膚炎は元々持っている酒さがステロイドによって増幅したものではないかという説を掲げるお医者様もいます。
酒さも酒さ様皮膚炎も研究段階
酒さはまだまだ研究段階にある皮膚疾患で、医者でもはっきりした事が言えない病気でもあります。
酒さが研究段階にある以上、酒さ様皮膚炎でも同じです。酒さよう皮膚炎の場合は原因が解明されているため、その原因を取り除く為にステロイドを断ちますが、これは治療の第1段階です。
その次の赤ら顔をどうやって治していこう、という段階になると酒さと同様の壁にぶつかります。
結局のところどちらの病気でも、「地道に体質改善を行いながら悪化因子を避け、肌を刺激しないように過ごす」という気長な治療法に行きつくことになります。
まとめ
酒さと酒さ様皮膚炎の違いをまとめてきましたが、さすがに「似た病気」と名付けられるだけあって同様の点がたくさんありました。
特に症状や対処法などは全く同じと言っても良く、症状が同じであるがゆえに酒さの対策がそのまま酒さ様皮膚炎の対策でもあります。
酒さ様皮膚炎ではまずステロイドの離脱症状である激しい炎症や膿、リンパ液と戦わなければなりませんが、それが終わっても酒さの第1段階(軽症)程度の赤みは残ります。
また、ニキビ状の発疹、膿を持ったブツブツなどは酒さの第2段階と同様の症状ですが、この症状が長く続いた場合、それが純粋なステロイドの離脱症状なのか酒さに移行してしまったものなのかの判断はお医者さまでも難しいでしょう。
治療法が確立されていない以上、そういった部分にこだわり医者や医学を恨むことは建設的ではありません。
この病気は「どうすれば肌の状態がいいか」や「どの要素で自分の肌は悪化するか」というように自分の肌と向き合う事がとても大事です。
治療を続けてきて、どうして私がこんな目に・・・と思うことも多々あります。それでも自分の肌と向き合い
- 肌が喜ぶことをする
- 肌が嫌がることはしない
という点に気をつけて生活していると、びっくりするくらい肌が応えてくれる時もあります。
自分の肌を一番改善させられるのは他ならぬ自分自身だ、ということ忘れないようにして下さいね。きっと良くなりますから。