アゼライン酸は海外の酒さ治療で一般的に使われるお薬です。
日本では医薬品としての入手手段がなく、お薬として入手したい場合は個人輸入などの手段が必要になります。
アゼライン酸は近年、国内でも入手ができるようになってきた成分の一つです。日本では医薬品としての認可が下りていないため、化粧品として扱われています。
中には医薬品並みの高濃度商品が出ており、決して国内での入手が絶望的な訳ではありませんが、高濃度商品はクリニック専用品であるなどの入手制限があります。
国内でも多少の入手手段があるアゼライン酸ですが、酒さのどのような症状に効くのでしょうか。今回はその辺りをまとめてみました。
もくじ
アゼライン酸とは
アゼライン酸は小麦や大麦、ライ麦などの穀物に含まれる成分です。『飽和ジカルボン酸』という難しい名前がついています。
普段口にする穀物に含まれており、食品として摂取している成分でもあります。
食品として摂取できる成分ですので安全性が高く、妊婦や授乳婦などにも使用できます。ディフェリンに代表されるように妊娠中や授乳中はある種の塗り薬が使えなくなりますが、アゼライン酸にはそういったデメリットがありません。
酒さは女性に発症することが多く、年代的にも妊娠や出産を考える世代であることから、妊婦や授乳婦でも塗布できるというのは大きなメリットです。
海外では30年以上前からニキビ治療薬として使用されており、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界の80カ国で使用されています。
メラニン生成を抑制しますので、元々は美白剤として使用されていました。その臨床試験中、偶然にニキビへの効果も発見されました。
欧米のニキビ治療ガイドラインでは、レチノイドに次いで第2選択肢となっているのがアゼライン酸。レチノイドとはトレチノインやアダパレンのこと。日本の薬剤名でいくとディフェリンですね。
ディフェリンに次ぐニキビ治療薬でありながら、妊娠中や授乳中でも使え、紫外線を浴びても良いなどのメリットがあります。
また、人によって塗布時の刺激感はあるものの、胎児奇形などの重大な副作用はないとされています。
アゼライン酸の効果
アゼライン酸は肌トラブルの多くに効果があります。ニキビにはもちろん、酒さ、肝斑など色々な肌トラブルに処方されます。酵素を阻害することから薄毛への効果もあるのではないかと話題のようですが、ここでは触れません。
- 古い角栓の除去
- 毛穴のつまりを解消
- 皮脂の分泌を抑制する
- ニキビの原因となる菌への抗菌作用
- 抗酸化作用
- 抗炎症作用
- メラニンの生成を抑制(美白作用)
アゼライン酸の効果はニキビ改善と同時に美白ができるという点が最大の特徴。
また、抗炎症作用もあることから、非炎症性の皮疹と炎症性の皮疹の両社に対して有効です。
ニキビと色素沈着を同時に改善できるお薬であり、酒さのブツブツとともに炎症後色素沈着にも有効です。
角栓除去や毛穴つまりの解消、皮脂分泌抑制は全てニキビに有効な効果です。また、微生物に対する静菌性、殺菌性といった特性を持っていますのでアクネ菌を始めとするニキビの原因菌を抑えてくれます。
アゼライン酸と酒さざ瘡
ブツブツタイプの酒さの方は顔の赤みも「酒さざ瘡」が原因のことも多く、ニキビが無くなることによって顔の赤みも軽減されます。その上炎症後の色素沈着も美白作用によって軽減されます。
アゼライン酸が自分のニキビに対して有効であれば、ニキビ改善に美白作用も伴って高い効果が期待できます。
一方、ブツブツがなく毛細血管拡張タイプの酒さの場合は、炎症後色素沈着に対しての美白作用がどの程度かで効果の実感は変わるでしょう。
また、角栓の除去や毛穴つまりの改善、皮脂抑制の結果として、肌のキメが整います。毛穴の開きも解消されますので、その結果としてニキビができにくくなる作用もあります。
アゼライン酸の酒さへの効果
アゼライン酸が酒さへ有効とされる理由はもう一つあります。
酒さの表皮では免疫異常が起こっているためToll様受容体(TLR)が過剰であり、その結果として抗菌ペプチドのカセリサイジンが過剰分泌されています。
このカセリサイジンの切断酵素がカリクレイン5。セリンプロテアーゼと呼ばれるたんぱく質分解酵素です。
酒さの場合はカセリサイジンの切断パターンが通常の皮膚とは異なっており、カリクレイン5の異常活性によって切断パターンが変化したと考えられています。
カセリサイジンとカリクレイン5が異常に増加すると皮膚に炎症を起こすことが知られており、酒さの炎症もこのためではないかとされています。
アゼライン酸の塗布は、カリクレイン5の発現に影響を与えます。
つまり、アゼライン酸の塗布によって酒さの原因となるたんぱく質の分解が抑制されるため、酒さへ効果が出るという事です。
アゼライン酸のピーリング作用
アゼライン酸には軽いとは言えピーリング作用があり、肌への刺激となる事があります。
アゼライン酸のピーリング作用はサリチル酸などよりも弱いとされており、酒さの肌でも比較的安心して使えます。
アゼライン酸の副作用
アゼライン酸の副作用には、ディフェリンなどのように重大なものがありません。
唯一、肌に塗った時に刺激感を感じることがありますが、塗り続けることによって刺激を感じなくなるとされています。
アゼライン酸のデメリット
アゼライン酸の特性ばかりを見てくるととても良さそうなお薬ですが、デメリットも当然あります。
それは他のものに比べて効果が弱いということ。
美白であればハイドロキノンとトレチノインなどのように非常に高い効果が期待できる代わりに、医師の監督のものに行うのが望ましいとされるものがあります。トレチノインなどは紫外線を浴びることも控えなくてはいけませんし、色々と制限がある分効果は高いです。
アゼライン酸は副作用がなく使え、美白とニキビ治療を両立できる代わりに作用が穏やか。重症のニキビ治療には向きません。
この作用が穏やかという点は酒さに取ってはメリットにもなり得ますが、重度のニキビに対しては別の方法の方が良い事もあります。
アゼライン酸の臨床試験
アゼライン酸を20%配合したクリームで臨床試験を行ったところ、尋常性ざ瘡(ニキビ)に対して1日2回、3か月の使用でかなりの改善があると報告されています。
また、そう痒または刺激感(チクチク・ピリピリ)、熱感などは多くの症例に認められましたが、初回投与から症状の程度が増した症例はなく、使用継続によって消失しています。
この臨床試験は軽度から中度のニキビ患者29名に対して行われ、皮疹の計数などを測定しています。
アゼライン酸の入手事情
アゼライン酸は海外でこそ一般的なお薬ですが、日本では医薬品としての認可が下りていません。医薬品として入手したい場合は個人輸入が必要になります。
とはいえ、最近では国内でもアゼライン酸の入手手段が出てきています。
まず、ロート製薬が高濃度のアゼライン酸配合の化粧品を出しています。取り扱いのある皮膚科のホームページやお医者様のブログからの情報によると、海外医薬品と同等レベルである20%のアゼライン酸が配合してあります。
但し、クリニック専用品であるため皮膚科や美容皮膚科などでしか取り扱っておらず、気軽に薬局で購入するというようなことはできません。
また、ロート製薬のものほど高濃度ではないもののアゼライン酸配合の化粧品も存在しており、医薬品でないながらもそういった化粧品を使用することでアゼライン酸の効果を体験することはできます。
化粧品レベルの配合ですから効果も穏やかですが、その分アゼライン酸の刺激を受けにくいです。高濃度のアゼライン酸が刺激になりすぎるけれども効果は感じる、という方には良いでしょう。
また、選択肢をiHerbにまで広げれば、日本の化粧品以上の濃度でアゼライン酸配合の化粧品を試すことができます。
但し、あまり極端な高濃度商品は肌への刺激も強く、低濃度であれば日本製商品で良いのではないかと思いますので、最初からiHerbで入手するメリットはないかもしれません。
ただ、日本製のアゼライン酸配合化粧品はまだ数も少なく、シリーズ展開されているものもないんですよね。現在のところはシリーズのうちの1商品にだけアゼライン酸が入ってる、という程度です。
個人的にはシリーズ展開されているAzeliqueシリーズが気になります。
まとめ
酒さの治療薬にも色々とありますが、それぞれに特性があり効く人と効かない人がいます。
アゼライン酸はニキビと美白が両立できることが特徴のお薬で、酒さ特有のたんぱく質を阻害する効果も分かっています。
こういった事から海外では酒さの治療にも積極的に用いられていますが、日本では処方薬がないのが現状。
日本ではどうしてもニキビ治療や酒さ治療が一歩遅れている感が否めないですね。
日本でも自費診療などを行うことができる美容皮膚科では、ロート製薬のDRX-AZAクリアを扱っている事も多く、酒さやニキビの治療に使われています。
それ以外での入手方法となると低濃度の化粧品しかないのが現状ではありますが、入手することができれば酒さ治療に効果的な手段となり得ます。
アゼライン酸というお薬の性質を理解して、酒さ治療に役立てて下さい。
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