皮膚炎の方にビオチン療法という方法が有効だという説がありますので、酒さや酒さ様皮膚炎で気になっている方もいらっしゃるかと思います。
簡単に言ってしまうと、ビオチンというのはビタミンBの一種で水溶性のビタミンです。
ビオチン療法というのはそのビオチンを大量摂取しつつ、大量摂取で体内バランスが崩れないように、他のサプリ(ミヤリサンとビタミンC)も同時に摂取するというやり方。
ビオチン療法では一日の規定量を上回る量のビオチンを摂取します。そのため、どうしても普通にサプリを飲んでいるよりも色々な注意点が必要になってきます。
今回は、ビオチンというのがどういったビタミンなのかをまとめておきたいと思います。ビオチン療法のやり方についてはごく軽くしか触れません。
ビオチンがどういう働きをするかを理解しておくと、ビオチンが皮膚炎に有効と言われている理由が、何となく理解できると思います。
もくじ
ビオチンとは
ビオチンはビタミンBの一種で、ビタミンB7です。ビタミンHとも呼ばれています。
水溶性ビタミンのため尿に溶けやすく、過剰に摂取した分は尿から排出されると言われています。
ビタミンBの一種ですから、ビタミンB群やビタミンBミックスのような、ビタミンBを総合的に摂れるサプリにも入っています。
ビオチンは腸内細菌が作り出すビタミンで、腸の中で作られるビタミンです。
体内で作り出すことができますので、普通の食生活を送っている健康な方には不足しづらいとされているビタミンです。
一方、アトピー患者さんなどには不足気味とも言われています。
また、何らかの理由で腸内フローラのバランスが崩れている場合には、ビオチンがうまく作られず不足気味になる事もあり得ます。
こういったビオチンの性質上、腸内フローラのバランスが崩れていて、腸の中で作られるビオチンの量が不十分な方に効果が出やすいです。
ビオチンの働き
炎症の防止
ビオチンは皮膚の炎症を防止する因子として発見されました。
そのため、皮膚の炎症に対する効果が大きく注目されています。
ビオチンは抗炎症物質を生成しますので、皮膚炎など炎症を伴う皮膚疾患に有効とされています。
アレルギー抑制
皮膚の炎症とも関係がありますが、ビオチンにはかゆみの原因であるヒスチジンという物質を排出する役目があります。
かゆみを引き起こすヒスタミンという物質はこのヒスチジンから生成されているので、かゆみの元となる化学物質を排出してくれる、ということになります。
皮膚の健康維持
また、皮膚や爪、髪の毛の細胞分裂を促す栄養素でもあります。
アミノ酸やコラーゲンの生成に関わっており、皮膚の正常な機能を保つために必要です。
たんぱく質の生成にも関係していることから、皮膚を作る細胞を活性化させて皮膚の新陳代謝を促し、老廃物の排泄を促します。
こういった性質から、ビオチンには皮膚や粘膜の健康状態を維持する働きがあります。
爪や髪は皮膚の仲間ですから、皮膚の健康維持を助けるビオチンは、爪や髪の健康維持にも働きかけます。
皮膚の生成を促すという点は、亜鉛と性質が似ていますね。
ビオチン欠乏症
ビオチンの欠乏症状としては以下のようなものが挙げられます。
- 白髪
- 脱毛
- 湿疹
- 炎症
- 皮膚疾患
- 落屑
- 結膜炎
- 筋肉痛
- 疲労感
- 食欲不振
- 味覚異常
- 血糖値上昇
- 不眠
- 神経障害
皮膚や髪に関する項目が多く挙げられているとともに、倦怠感や食欲不振などの一般的な欠乏症にみられる症状も挙げられています。
欠乏症のリストを眺めていても、皮膚には関係の深そうなビタミンですね。
ビオチン不足になりやすい場合
ビオチンは腸内で作られることから、抗生物質を長期に渡って服用していると欠乏しやすくなります。
また、卵白はビオチンの吸収を阻害します。
こういった事から、生卵白を大量に食べたり、抗生物質を飲んでいる人にはビオチン不足の傾向がみられます。
ビオチンの摂取量と食材
ビオチンは他の栄養素と違い、推奨量や上限量などが定められていません。定められているのは目安量で、どの程度の量を摂るのが適当とされているかの目安です。
厚生労働省の定める一日の目安量は成人の男女ともに50μg。(マイクログラム=0.000001g)
一方で一般的な成人が通常の食事から摂取しているビオチンは一日平均45μgとされており、あまり不足しているようには見えません。
また、ビオチンの上限値こそ設定されてはいませんが、日本の薬事法的にサプリなどに含有できる量が1錠中500μgまでと決まっています。
参考厚生労働省 - 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要
ビオチン療法での摂取量
ビオチン療法では、5mgのビオチンを1日3回摂取します。
1000μg = 1mgですので、5000μgのビオチンを3回、合計15000μg(15mg)のビオチンを摂取することになります。
日本では上限量が定められていたりする事から、ビオチン単体で摂ろうとすると海外製のサプリに頼ることになります。
ビオチンの大量摂取をするビオチン療法では、整腸剤である乳酸菌とビオチンの吸収を助けるビタミンCを同時に摂取することが推奨されています。
ビオチン療法で難しいのは整腸剤である乳酸菌で、乳酸菌なら何でもいい訳ではありません。
乳酸菌やビフィズス菌の中には、ビオチンをエサとするようなものがありますので、そういった菌を摂ると逆効果に働くことも。
そのため乳酸菌サプリを摂っていたりヨーグルトを大量に食べている場合、ビオチンをエサにするような菌が入っていると効果が出にくいこともあります。
また、腸内環境というのは人それぞれで合う乳酸菌も人それぞれな事から、どの菌が絶対という事はなく、人それぞれに効果を感じた菌とその量のバランスが違います。
一般的には、ビオチンをエサとしない事が分かっている酪農菌の整腸剤であるミヤリサンというサプリの同時摂取が勧められています。
サプリでのビオチン摂取
海外製のサプリには5mgの錠剤が多いです。5mgは5000μgになります。
1錠飲むだけでいきなり5000μg摂れますので、摂取効率はかなり良い反面、日本の基準に合わせた低用量で摂ることはできません。
日本のサプリにはビオチン単体で販売されているものはなく、ビタミンB群としてビタミンBのサプリに含有されています。
低用量で摂取したい場合にはビタミンB群のようなサプリの中で含有量の高いものを探すか、海外製のサプリの中でもタイムリリース型というゆっくり溶けるタイプを選ぶか、のどちらかになります。
ビオチンの豊富な食材
- 酵母
- レバー
- 豆類
- 卵黄
卵黄にはビオチンが豊富ですが、卵の白身の部分はビオチンの吸収を妨げますので注意が必要です。
皮膚疾患とビオチン、酒さの関係
皮膚疾患とビオチン
ビオチンと皮膚疾患の関係は、抗炎症作用と皮膚細胞の活性化、細胞合成の促進が注目点かと思います。
ちょっと分かりにくいと思うので、分かりやすい言葉に置きかえると
- 炎症を抑える働き
- 丈夫な皮膚を作る働き
- ターンオーバーを正常に行う働き
- 細胞間脂質(コラーゲンやセラミド)の合成を高める働き
などのように、皮膚の機能を正常に保つ働きの他に、炎症を抑えてアレルギー症状を緩和する作用があります。
また、アトピー患者さんのなかにはビオチンの濃度が低下している人も多いそうで、全身に炎症を起こしてしまうアトピーの改善には量が足りないとする説もあります。
ビオチンが掌蹠膿疱症やアトピーの治療に用いられるのは、こういった背景があるからです。
酒さとビオチン
酒さへの効果は掌蹠膿疱症やアトピーほど研究されていませんが、ビオチンには炎症を抑えて皮膚機能を正常化するという働きがありますので、顔の炎症に悩む酒さにも一定の効果はありそうです。
アトピーの方がビオチン不足の傾向にあるのは、皮膚の炎症でビオチンが使われているからかもしれません。酒さはアトピーほど全身には出ませんが、やはり肌の炎症に悩むという点では一緒です。
また、酒さの原因の一つとして腸内環境の悪さが挙げられますが、ビオチンは腸内の善玉菌が作ってくれるビタミン。
腸内環境が悪ければビオチンも作られづらくなり、不足しがちになってもおかしくありません。
また、ビオチンは免疫を整えてくれるという話もありますので、免疫異常が疑われるタイプの酒さ患者さんには有効かもしれません。
免疫を整えるためにも腸内環境の整備は有効な手段ですので、こういった栄養素を積極的に摂る意味もあるのではないかと思います。
まとめ
ビオチンは皮膚に関係の深いビタミンで、皮膚や粘膜を正常に保つのに重要な役割を果たします。
掌蹠膿疱症を改善したという事例だけでなく、アトピーで積極的に摂取を試みる方もいらっしゃり、一部の方は効果を感じています。
ビオチン療法は医療機関で行っていることもありますので、あまり自己判断せずに病院で指導してもらいながら行った方が安心ではあります。
いきなり大量摂取はちょっとためらうな、と思っている方がいたら、まずはビタミンB群から普通の量を飲んでみてもいいんじゃないかと思います。