ステロイド軟膏にはいくつかの種類があり、身体への吸収度によって5段階に分けられています。強いものほど体内に吸収されやすく、炎症などを抑える効果も高い代わりに副作用も出やすいと言えます。当然、強いものを塗っていれば酒さよう皮膚炎にもなりやすくなります。
酒さ様皮膚炎を発症してしまったという事はきっかけになったステロイド剤があるはずです。使用したステロイド剤や使用期間、使用回数などは人によって違いますが、自分がどの程度の強さのステロイドを使用していたのかを知っておく事は症状の把握にも役立ちます。今回はステロイドの強さをまとめてみたいと思います。
もくじ
ステロイドと酒さ様皮膚炎
酒さ様皮膚炎はステロイドの不適切な使用による皮膚炎ですが、発症箇所は顔に限定されています。簡単に言うと顔にステロイドを塗り続けたことによる疾患です。ステロイドを塗らなければ発症しません。酒さ様皮膚炎の中でも特に口の周りは口囲皮膚炎という診断がつく事もありますが、これも広範囲には同義と捉えても良いでしょう。
ステロイドと酒さ様に関しては以前の記事の内容と重なるため、ここでは説明しません。
ステロイドのランクと酒さ様皮膚炎治療期間の関係
酒さ様皮膚炎を発症してしまった方には、弱いステロイドでも発症してしまった人もいれば、強いステロイドを顔に塗り続けてしまった人もいます。酒さ様が完治するにはステロイドの使用期間や使用していた薬剤の強さが密接に関係していると言われており、使っていたステロイドが強いほど治りにくくなると考えられています。
一説には「酒さよう皮膚炎の完治にはステロイドを使用した期間と同様の期間が必要である」との考え方も。半年間ステロイドを塗り続けていたら完治に半年かかる、という意味です。
ステロイドの使用期間
アトピー患者さんなどは何年、何十年とステロイドを塗り続けている事もあります。身体に対して10年塗っていたからと言って10年かかる訳ではありません。一般的に、顔に対してのステロイド外用薬の連続使用は長くても1ヶ月でしょう。
但し、ステロイドの場合
10日使って1週間あける→10日使って1週間あける→10日つかって・・・(ループ
というような使われ方がされます。こういった場合、自分はどの程度の期間ステロイドを使用していたのか分からなくなりますが、こういう場合は空けている1週間も計算に入れます。
使用期間が長くても肌は改善していく
そうなると絶望的な期間使ってしまっている方も多いのですが、完治にはステロイド使用期間と同様の期間が必要というのはあくまで目安です。どうしてそういう事を言われるかというのは、ステロイドの皮膚萎縮などの副作用から「それだけ肌が弱くなっているから元の強さの皮膚に戻るのには相当の期間が必要」という意味合いです。短期間で治る病気でない事は確かですが、10年かけないと治らないという訳ではありませんし「赤みを帯びているけど気にならない肌」程度であれば数ヶ月程度で持っていく事は可能です。
赤みが完全に消えるのは時間がかかるかもしれませんが、発症直後の赤い爆弾岩のような肌がずっつ続くわけでもありません。時間がかかる事は理解したうえで前向きに治療に取り組んでいきましょう。
ステロイド軟膏の強さランク一覧
さて、肝心のステロイド軟膏の強さに関しては表が分かりやすいので一覧表にします。Ⅰ郡が最も強く、数字が上がるほど弱くなります。最も弱いランクはⅤ郡ですので、ステロイドは1~5の5段階の強さに分けられている事になります。
また顔や首、頭部は吸収率が多いため、同じ症状でも弱めのステロイドを使用する必要があります。腕の内側を1の吸収率とした場合、顔の吸収率は頬や下顎で13、額で6.5です。つまり、頬やあごでは腕の13倍も吸収してしまいます。
身体に処方されたステロイドを誤って顔に使用してしまい、酒さ様皮膚炎になってしまうケースも多いため、部位による吸収率の違いも酒さ様発症の要因となっています。
I群 Strongest(最強)
製品名 |
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ジフラール |
ダイアコート |
デルモベート |
最も身体に吸収されやすい成分を使用。作用が強いため、原則として子供には処方されない。連続使用の目安は大人の四股で1週間。
Ⅱ群 Very Strong(とても強い)
製品名 |
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アドコルチン |
アンテベート |
テクスメン |
トプシム |
ネリゾナ |
パンデル |
ビスダーム |
フルメタ |
プデゾン |
マイザー |
メサデルム |
リンデロンDP |
大人で体幹部、子供では腕や足などの四股に処方される。連続使用の目安は大人で1週間以内、子供では数回。
Ⅲ群 Strong(強力)
製品名 |
---|
ザルックス |
フルコート |
ベトネベート |
ボアラ |
リドメックス |
リンデロンV |
リンデロンVG |
大人への使用は全身から体幹部、子供へは顔や陰部を除く体幹部に処方される。連続使用の目安は大人で2週間以内。子供で1週間以内。
Ⅳ群 Medium(普通)
製品名 |
---|
アルメタ |
キンダベート |
ケナコルト |
ケナログ |
パルデス |
プランコール |
レダコート |
ロコイド |
大人、子供共に顔を含めた全身に処方される。連続使用の目安は大人で2週間、子供でⅠ~2週間以内。
Ⅴ群 Weak(弱い)
製品名 |
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オイラックスH |
コルテス |
テラ・コートリル |
ネオメドロールEE |
プレドニン |
身体に吸収されにくい成分を使用しており、薬を最も吸収しやすい陰部やお尻にも処方される。連続使用の目安は大人、子供ともに2週間。
酒さ様皮膚炎の発症が多いケース
良く見かける酒さ様皮膚炎発症ケースは
- 適切なランクのステロイドではあるがだらだらと塗り続けてしまった
- 強いランクのステロイドを顔に塗ってしまった
のどちらかです。強い薬を使っちゃったか、長く塗っちゃったか。どちらの場合も誤った使用方法なのですが、中には
強いランクのステロイドを顔に塗り続けてしまった
などという、両方やってしまったパターンも見かけます。こうなると通常の場合よりも治療期間がかかるかもしれませんね。こういったパターンで多いのは
身体用に処方されていたはずの薬を顔に塗り、すぐに綺麗になることから常用してしまった
というようなケースが多いです。ステロイドの特性や使用方法を学ぶことでこういったケースは減らすことができます。私自身もステロイドに対する知識がもう少しあったら酒さ様皮膚炎は発症していなかったかもしれません。全ての責任は不適切な使用をしてしまった私自身にあります。
ちなみに、私自身の酒さ様発症ケースは以下の記事で詳しく触れています。
ステロイド+保湿剤
ステロイドが処方される際、ステロイド単体では処方されず保湿剤などの他の成分と混ぜて処方される事があります。こうなってしまうと薬局で混ぜてからケースなどに入れて渡されるため、外観からはどんな薬か分からなくなります。
確実なのはお薬手帳などの薬の管理表を見ることですが、こういったものがない場合は混合されて処方された薬の成分を確認することはできません。
注意したいのは、保湿剤で薄めてあるからと言ってステロイド成分が薄くなる訳ではなく、効き目としては同様の効果があります。また、混ぜる薬によってはステロイドの皮膚への浸透を高める事もあります。つまり吸収率が良くなる事があります。
薬局によってはフタやケースに薬剤のシールを貼ってくれるところもありますが、そういうところばかりではありません。自分の塗っているステロイドがどの程度のランクなのか、そもそもステロイドを使用している薬なのか把握できない場合は安易に顔や頭部、陰部などの吸収率が良い部位に塗るのは止めましょう。
どんな薬か把握できないくらいなら捨ててしまうのが一番安全です。
まとめ
ステロイドは適切に使用すればとても頼りになる薬です。使い方を間違ってしまった事は不幸な事ですが、だからと言ってステロイドを全否定するのは台所の包丁が人を刺せるからと言って全否定するのと同じです。こういう考えを持ってしまうと、アトピービジネスなどのステロイドを悪く言って高額なスキンケア商品を買わせる手法にひっかかりやすくなります。ステロイドの効果や使用法を学び、適切に使えるようにするのがステロイドと上手に付き合うコツです。使う必要がない場合にはもちろん使わなくて構いませんが、使った方がいい場合もたくさんあるのです。
今回はステロイドのランクを見てきましたが、使っているお薬はどのランクだったでしょうか。もし、顔にとても強いクラスのステロイドを使用している場合には、すぐに担当医に使い方を確認して下さい。但し、顔であっても炎症が強い場合はⅢ郡程度のステロイドを使用する場合もあります。短期間で炎症を取るためです。処方されている薬がランクの強いものでも、担当医の指示の元に使用しているのであればその指示に従ってください。勝手に塗りやめたり、逆に自己判断で塗ったりするのは止めましょう。
コメント
ありがとう、お陰でよく分かりました。