酒さ様皮膚炎で脱ステロイドを行う場合に気になることの一つが『リバウンド』。
それまで使用していたステロイド剤を中止すると激しい離脱症状が現れて、一時的に症状が悪化すると言われています。
酒さ様皮膚炎は顔にステロイドを長期連用したことによる皮膚炎ですから、脱ステロイドを行わなくてはいけません。
患者の状態や医師の治療方針によって『減ステロイド』という方法が取られることもありますが、その場合でも最終目標は脱ステロイドでしょう。
この脱ステにまつわる『リバウンド』というのが色々な意味で使われており、少し混乱を招きかねない要因にもなっています。
今回はその辺を少しだけ掘り下げて、分けて考えた方がいい『リバウンド』についてまとめておきたいと思います。
もくじ
ステロイド離脱によるリバウンド
酒さ様皮膚炎の場合、まず最初に経験するのがステロイド離脱によるリバウンドです。一般的にはこの状態を差してリバウンドと呼ばれることが多いかと思います。
この『リバウンド』はそれまでに塗っていたステロイドを急激に止めたことによる離脱症状です。激しい炎症や腫れ、ニキビ状発疹、浸出液や膿など、真っ赤な肌とパンパンに腫れた顔で多くの方が苦しむことになります。
このリバウンドは酒さ様皮膚炎の実態であり、ステロイドを長期連用した結果でもあります。酒さ様皮膚炎の場合、ステロイド離脱によって生じる重篤な症状を落ち着かせることが当面の目標となるかと思います。
ステロイド離脱によるリバウンドはどのくらいの期間かかるかというのは人それぞれで、ステロイドを使用していた期間、使用していたステロイドのランク、個人の体質や生活環境に大きく左右されます。
一般的に言われているのは、ステロイドを使用していた期間が長くランクの強いものを使っているほど離脱症状が長く続くということです。
それに個人の体質や悪化要因といった要素が加わります。年齢が若い方が治りは早いですし、自分の悪化要素を把握して排除する生活を維持できている方が治りが早いです。
参考までに、私のステロイド離脱によるリバウンドが一段落ついた、と考えられるが3か月頃。それから細かいリバウンドを繰り返しつつも6か月過ぎる頃には、脱ステによるリバウンドはかなり落ち着いています。
ステロイド離脱過程の波もリバウンド
ステロイドの離脱症状が治っていく過程でも、細かなリバウンドを繰り返します。少し良くなったと思っていたのに悪化して落ち込むこともしばしば。
脱ステ中には「昨日まで改善方向に進んでいたのに、あっという間に炎症が再発していた」ということはしょっちゅうです。
脱ステは「3歩進んで2歩下がる」とか「波がありつつも長期的に見れば良くなる」とか言われますが、本当にその通り。
2歩下がってしまう時や、波の下の方、ダウン状態の時も『リバウンド』と称されます。
リバウンドではありますがステロイドの離脱症状が落ち着いていないため、まだステロイド離脱の影響によるリバウンドと言っていいと思います。
脱ステから年数が経ってから起こるリバウンド
一方で、脱ステロイドから年数が経っているにも関わらず皮膚症状が悪化する事を『リバウンド』と表現することがあります。
私の場合ですと、脱ステ後1年以上経っているにも関わらず症状が悪化してしまったような場合ですね。
脱ステを経験している多くのブログでも、こういった皮膚症状の悪化をリバウンドと称しています。
急激に悪化する様子や腫れ、熱、浸出液や膿、皮むけなど、ステロイド離脱の時と同様の症状が出ますので、どうしても当時と同じ『リバウンド』という言葉を使ってしまうんですね。『リバウンド』以外のうまい言葉が見つからないという側面もあります。
ステロイドの影響があるかどうか
ただ、こういった状態でのリバウンドをステロイドの影響と捉えるかどうかは少々難しい問題です。
ステロイドの離脱症状がいつまで続くかというのは諸説あり、数週間で落ちつくと言われることもあれば数年続くと言われることも。
これはステロイドの影響を「どこまで」と定義するかにもよって違ってきます。
ステロイドの離脱症状のみをステロイドの影響とするか、ステロイドで弱った皮膚が引き起こす皮膚疾患もステロイドの影響とするのか。
ステロイドには皮膚萎縮や免疫抑制といった副作用があります。皮膚萎縮が真皮にまで及んでしまうと回復には数年かかりますし、副腎機能の回復にもかなりの年数がかかるとも言われています。
ステロイドからの回復に必要な期間
一度弱った機能は回復に相当の期間が必要です。
ただし、それをステロイドの副作用とするかどうかは、医師の間でも意見が分かれる部分だと思います。ステロイド論争の争点にもなりがちな部分ですね。
ステロイドの論争がどうであれ、ステロイドの影響によって肌が弱っていたり免疫機能が弱っていたりすれば、皮膚の炎症や肌荒れは起こりやすい状態です。
酒さ様皮膚炎というのは、ステロイドの長期連用をした事によって起きる病気です。
ステロイド離脱の症状が治まっても、ステロイドの皮膚萎縮や免疫抑制、血管収縮作用の反発による血管拡張などの影響は受けています。つまり、皮膚症状が悪化しやすい肌状態。
この状態で皮膚疾患が悪化すれば、やっぱり『リバウンド』という言葉が使われます。
このリバウンドがステロイドのせいのなのか、と言われれば、ステロイドの影響はあると思われるけれども副作用そのものではない、という何とも曖昧な状態になります。
元からの皮膚疾患が悪化する
『リバウンド』という症状を考える時にちょっと意識しておきたいのが、元からの皮膚疾患が悪化すること。
ステロイドの副作用に懐疑的な医師の間では、ステロイドにリバウンドなど存在せず元からの皮膚疾患が悪化しただけである、という説を唱える医師もいます。
アトピーの脱ステに関して良く言われることですね。
明らかにリバウンドと思われる症状があっても「ステロイドの塗り方が足りなかった」や、「適切に塗らないから元からの炎症が悪化しただけだ」というような論調です。
そういった論調が正しいかどうかはともかく、ステロイド離脱を行うという事はステロイドを塗っていたという事です。
つまり、もともと何かしらの皮膚疾患を持っている、ということ。
その皮膚疾患が何らかの要因で悪化する事は十分にあり得ます。アトピーやニキビ、脂漏性皮膚炎など、酒さ様皮膚炎と併発すると思われる皮膚疾患はたくさんあります。
その疾患が悪化してしまうことも『リバウンド』と称される事があります。
こういうリバウンドは脱ステからしばらく経っても起こります。脱ステロイドを行ったからと言って、元からの皮膚疾患が治るわけではありません。
脱ステを行う過程で皮膚が強くなって疾患が起こりにくくなることは考えられますが、脱ステしたら疾患を引き起こす原因が取り去られるわけではないんですね。
ここを勘違いすると、脱ステしたのに治らない、と考えてしまいます。
酒さ様皮膚炎の脱ステで状態が改善するのはステロイドの離脱症状(リバウンド)であって、元の皮膚疾患を治すには別の努力が必要になります。
酒さ様皮膚炎で合うもの合わないものが人によって違うのも、元となる皮膚疾患や肌質、生活環境が違うので当然と言えば当然です。
大人ニキビ用のケアを脂漏性皮膚炎の方に行ったら悪化する可能性がありますよね。でも、酒さ様皮膚炎というくくりでは、同じ病気です。
酒さ様皮膚炎の脱ステ後、離脱症状(によるリバウンド)は治まっても、元々の皮膚疾患の再発症(するリバウンド)は起こりやすい状態。
酒さ様皮膚炎の脱ステ後は、自分がそのような状態である事を意識しておくことが大事です。
元の皮膚疾患が悪化した時にどうするか
脱ステは手段であり目的ではありません。アトピーの方はアトピー症状を良くするために脱ステを行うのであって、脱ステできればアトピー症状が悪くなってもいいという訳ではないと思います。
酒さ様皮膚炎の場合は、顔にステロイドを塗り続けてしまったがゆえに起こっているステロイドの副作用。発症してしまえば、一度は脱ステを行わなくてはなりません。また、酒さにもステロイドは禁忌と言われていますから、ステロイドを塗らない治療をしなくてはなりませんね。
ところが、元から持っている皮膚疾患が悪化した場合、ステロイドによる治療が選択肢に入ってきます。
炎症を抑えるにはステロイドが一番ですし、炎症を放置すれば肌のバリア層はなおさらめちゃくちゃになりますから、ステロイドによる治療というのは正しい側面もあるのです。
酒さや酒さ様皮膚炎と他の皮膚疾患を併発している場合、どの治療から手を付けていいか分からない側面もありますよね。
そういった場合にどのような治療を行っていくか、結局のところ決めるのは自分自身でしかありません。
酒さ様皮膚炎の発症歴があるからステロイドを使いたくない、というのであればその意思に沿った治療を行ってくれる医師を見つける努力も必要です。酒さを併発していると思われてもまずは炎症を抑えるという方針の医師や、ブツブツ=ニキビと考えてその治療を優先する医師だっているでしょう。
日常生活に支障が出るくらいならばステロイドを使ってコントロールする、という選択肢だってあり得ます。その場合は慢性使用にならないよううまく使っていくためにも、信頼できる医師を見つけ、きちんとした診断を仰ぐ方が賢明です。
医師の中にもステロイドさえ出しておけばいい、という医師もいることは確かですので、なかなか難しいですよね。
どういう場合であっても、自分が納得して治療を受けれるよう、医師とは十分に話し合い、ステロイドの長期連用だけは二度としないようにしましょう。
ステロイド離脱後の皮膚状態
ステロイド離脱を行った後の皮膚状態は、少し分けて考えられるかと思います。
- ステロイド離脱の影響で現れる急激な炎症の悪化
- ステロイド離脱の症状は治まっているが、ステロイドの影響で肌が弱くなっている状態
- ステロイドの影響は抜けているが元の皮膚疾患が残っている状態
この1~2、2~3の期間に明確な区別はなく、離脱症状が治まったから明日から2番です!という簡単なものではありません。
また、ステロイドの離脱症状がどこまで続くかも見解が分かれることから、あまり明確な区別をする意味もありません。
ただ、ステロイドの離脱症状によるリバウンドなのか、それとも元の皮膚疾患が悪化したためのリバウンドなのかは何となく把握できるかと思います。
その中間に、元の皮膚疾患が悪化しやすい状態、つまりステロイドの影響で皮膚が弱っている状態が入ってくると考えられます。ステロイドの影響で皮膚が弱っているから元の疾患も悪化しやすい、ということですね。
脱ステ医の先生はこのような状態もステロイドの影響と考える方が多いですし、標準治療の先生はステロイドの離脱症状のみをステロイドの副作用と捉える傾向があります。
まとめ
『リバウンド』という言葉は脱ステ後の色々な状態を意味しています。一口にリバウンドと言っても、どういう状態のリバウンドなのかが人それぞれ。
体験談やリバウンド関連の情報を集めるときは、そういった背景も頭に入れながら読むと、ステロイドや離脱症状への誤解が少なくなります。
色々な使われ方をするリバウンドという言葉ですが、皮膚状態の悪化である事だけは間違いありません。
悪化要素を排除しつつ肌を改善していけるよう、自分のリバウンドがどんな状態で起こっているのかをきちんと分析しましょう。
ちなみに、私の直近のリバウンドは、肌の厚みやバリア層が戻っていないところに起きた夏という季節要因と授乳停止によるホルモンバランスの変化だと考えています。そこに皮むけの兆候を見逃してきちんとしたケアをしなかった事が追い打ちをかけたかな、と。
季節要因は意外と侮れませんし、脱ステ後も数年はちゃんと様子を見ろと言われますよね。
皮膚病患者が良い肌状態を保ち続けるって、難しいですよねぇ。