ステロイドは体内で作られるホルモンの一つ。ステロイドホルモンの種類をまとめました。

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酒さ様皮膚炎の患者さんでステロイドというと、ぱっと浮かぶのはステロイドの塗り薬だと思います。ロコイドやキンダベート、リンデロンなどのステロイド外用薬ですね。

本来ステロイドというのは私たちの体内で作られるホルモンの一種で、危険なものでもなんでもありません。

副腎皮質ホルモンに強い抗炎症作用がある事が発見されたためにお薬に流用されたのであって、元々は自分の体で作れるホルモンの一種です。

「ステロイドホルモン」と呼ばれるホルモンには種類があり、中には身近なホルモンも。

今回はステロイドホルモンの種類をまとめておこうと思います。

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ステロイドとは

化合物としてのステロイド

厳密に言うと「ステロイド」という言葉は化合物の種類を表しています。同じような形をした化合物を全て「ステロイド」と呼んで区別しています。

単に形で分類してあるため、多くの種類のステロイドが存在します。

どんな分類方法かというと・・・

炭素六原子から成る環状構造三個と,炭素五原子から成る環状構造一個とを含む構造(化学式 C17H28)を基本骨格にもつ一群の有機化合物の総称

引用:Weblio辞書 – 三省堂:ステロイド

化学が好きな方以外は頭が痛くなりそうな分類です。つまり、特定の化学式を持つ化合物は全て「ステロイド」という名前で分類されます。

そのため、ステロイドという物質自体は体内に限らず動植物など自然界に広く存在し、天然のものも合成のものもあります。

ステロイドホルモンとは

化合物としてのステロイドよりも有名なのがステロイドホルモン。通常ステロイドと言えばこちらを差すことが多いかと思います。

私たちの体の中には多くのホルモンが存在しています。その一つがステロイドホルモン。

お薬として知られるステロイド剤はステロイドホルモンを配合した薬品ですし、スポーツ選手のドーピング問題で取り上げられるステロイドは、人工的に合成されたステロイドで強力なホルモン作用を持ちます。

このように、一般的にステロイドと言えばステロイドホルモンのことを差しますが、このステロイドホルモンにも種類があります。

ステロイドホルモンの種類

ステロイドホルモンの種類は大きく分けると2つ、もう少し細かく分けると4つの分類ができます。

ステロイドホルモンホルモンの名前
副腎皮質ホルモン糖質コルチコイド
鉱質コルチコイド
性ホルモン男性ホルモン
・アンドロゲン
女性ホルモン
・エストロゲン
・プロゲステロン

エストロゲンやプロゲステロン(黄体ホルモン)など、女性には馴染み深い女性ホルモンもステロイドホルモンの一種です。

女性に特有のPMSはホルモンバランスの崩れから起きている事も多く、酒さや酒さ様皮膚炎を患っていなくてもホルモンを意識している方は多いと思います。

また、酒さ症状の出方に月経周期が関係する方も多く、ニキビ治療などでもホルモン療法が行われるなど、肌とホルモンの関係は深いです。

酒さ様皮膚炎の原因ともなるステロイド剤は、副腎皮質ホルモンの方。副腎という臓器の皮質で作られているホルモンです。

副腎皮質ホルモンとは

「副腎」というのは腎臓の近くにある、色々な種類のホルモンを作り出す臓器です。副腎の外側にある皮質「副腎皮質」で作られるホルモンのことをまとめて「副腎皮質ホルモン」と言います。

この副腎皮質ホルモンには抗炎症作用を始めとして様々な作用があり、肌の状態を強力に整える事ができるホルモンです。

副腎皮質ホルモンには糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドがありますが、糖質に作用するホルモンか、鉱質(ミネラル)に作用するホルモンかが違います。

  • 糖質コルチコイド ・・・ 糖質に作用
  • 鉱質コルチコイド ・・・ 鉱質に作用

この副腎皮質ホルモンをお薬にしたのが、ステロイド剤。主には糖質に作用する糖質コルチコイドが使われています。

皆さんが思い浮かべるロコイドやキンダベート、リンデロンなど、酒さ様皮膚炎の原因ともなるステロイドの塗り薬もこの一種です。

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糖質コルチコイド

糖質コルチコイドはグルココルチコイドとも呼ばれます。こういう化学の名前って舌かみそうですよね。

糖質コルチコイドの主な働きには以下のようなもの。

  • 糖やたんぱく質の代謝
  • 血糖値の上昇
  • ストレス抑制
  • 免疫抑制
  • 炎症抑制

糖質コルチコイドはストレスから身体を守り、炎症の抑制や糖やたんぱく質の代謝を行い、身体に取ってなくてはならない重要なホルモンです。

糖質コルチコイドの種類には以下の3つがあり、代表的なホルモンがコルチゾールで糖質コルチコイド活性の約95%を占めます。

  • コルチゾール
  • コルチゾン
  • コルチコステロン

鉱質コルチコイド

副腎皮質ホルモンのもう一つのホルモンが鉱質コルチコイド。主な働きはナトリウムやカリウムなどのミネラルを身体に留めておくことです。

ミネラルバランスに関わる重要なホルモンで、身体の水分バランスを保つのに重要な役割を果たします。

代表的なものにはアルドステロンがあります。

  • アルドステロン
  • デスオキシコルチコステロン
  • フルドロコルチゾン

ステロイド剤とは

ステロイド剤とは、人の臓器(副腎)から分泌されるホルモン(糖質コルチコイド)を治療薬として利用できるようにしたもの。つまり、副腎皮質ホルモンをお薬にしたものです。

ステロイド剤の種類には内服薬(飲み薬)、外用薬(塗り薬や張り薬)、吸入薬や注射などがあります。

ステロイドのお薬で最も有名なのが内服薬のプレドニン。様々なステロイド剤の中で、薬の効果や作用時間の基準にもなっているお薬です。

また、ステロイド吸入薬はぜんそくの治療などに用いられます。

ステロイド外用薬

ステロイドの副作用や酒さ様皮膚炎など、多くの問題があるのがこの外用薬。塗り薬の他にも貼り薬もあるようです。

ステロイド外用薬は皮膚科でよく用いられており、薬効成分としてステロイドホルモンが用いられています。

基材によって軟膏やクリーム、液状のものなど様々ですが、総じて強い抗炎症作用があります。

皮膚の痒みやカサカサした乾燥やじゅくじゅくした浸出液など、皮膚トラブルの多くは炎症が原因です。

ステロイド外用薬にはこの炎症を鎮める作用があり、とても強力である事から皮膚科治療の第一選択肢ともなっています。

ステロイド外用薬の強さ

ステロイドは効き目の強さによって5段階に分けられており、炎症の強さやどの部位に使うかで使用するランクが決定されます。

一般的には炎症が強いほどランクの強いステロイドを使用し、短期間で炎症を抑えます。

顔や陰部など、通常の皮膚よりも吸収率の良い部位には1ランク落としたステロイドが使用されるなど、部位によってもどのランクのステロイドを塗るかが違います。

また、お子さんや赤ちゃんは大人よりも肌が薄いため、通常よりも弱いステロイドを使用します。

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ステロイド外用薬の局所的副作用

ステロイドの炎症を抑える作用はとても強力ですが、その分副作用も多く、間違った使い方をすると強烈な副作用に悩まされることになります。

酒さ様皮膚炎もその一つ。

薬というのは本来皮膚を通過できない物質であっても、経皮吸収剤などを使って吸収させるなど、身体に有効な働きをする工夫がしてあります。

その分、とても強力な作用がありますが、作用のある薬には必ず副作用もあります。副作用も軽度なものから重度なものまで様々ですが、薬を利用する際には必ず副作用にも目を向け、正しく利用するようにしましょう。

ステロイド外用薬の副作用は局所的に表れます。内服や注射の全身投与の場合と違い、塗った部分に対して局所的に副作用が生じます。

ステロイド外用薬の副作用は以下のようなもので、多くは酒さ様皮膚炎の症状そのものでもあります。

ステロイドの副作用主な症状
皮膚萎縮皮膚が薄くなる。肌が弱くなってバリア層が上手く働かなくなります。
毛細血管拡張毛細血管の拡張。皮膚の薄さと相まって、肌が赤く見えます。
ステロイドざ瘡ニキビのようなブツブツが多発します。先端に膿を持つことも。
免疫異常ステロイドは免疫を抑制しますので、細菌の感染に弱くなります。それがさらに他の皮膚疾患を合併する原因にもなります。
色素脱失メラニン色素が少なくなり、皮膚が白くなります。
多毛産毛が太くなります。

外用薬による副作用は、ステロイドを正しく利用している限り起こらないとされています。

酒さ様皮膚炎を発症してしまう人の中でもステロイドの使用期間やランクなどは様々ですが、全ての人に共通するのがステロイドの慢性利用です。

ステロイドを塗る部位や塗る量、種類や期間に至るまで、皮膚科医の指導を仰ぎながら塗る必要があり、ステロイドの使用期間を短期間に留める必要があります。

酒さ様皮膚炎を患う多くの人が、自己判断での利用や慢性的な利用をしています。中には医師による適切な指導を受ける事が出来ず、使用するステロイドのランクがどんどん上がっていって、酒さ様皮膚炎になってしまった方もいます。

医師の処方に疑問を感じたらそのままステロイドを継続して大丈夫かどうか確認するとともに、別の医師のセカンドオピニオンを求めるなどの手段も考えていきましょう。

まとめ

抗炎症作用が強い副腎皮質ホルモンが注目されがちですが、ステロイドホルモンには男性ホルモンや女性ホルモンなど、身近なホルモンも含まれています。

女性ホルモンは肌との関わりも深く、黄体ホルモンであるプロゲステロンが増える時期になるとニキビになりやすいという経験をお持ちの方も多いかと思います。

こういったホルモンも、本来はステロイドホルモンの一種。

ステロイドホルモン自体は、身体の中で作られる有用なホルモンなのです。

ステロイド剤の利用には色々な考え方があるかと思いますが、ステロイドというものがどんなものなのか理解して、正しく使っていきましょう。

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