酒さとピロリ菌の関係。ピロリ菌が酒さに与える影響とは

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ピロリ菌

酒さと言えば肌の病気ですが、その酒さのブツブツや赤ら顔の原因は人によって異なり、今でも原因は不明と言われています。

原因として上げられているのは皮膚表面のニキビダニだったり、消化不良だったり。アルコールや香辛料などの刺激物が原因の場合もあれば、腸内細菌、免疫異常、と様々な原因が考えられています。

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ピロリ菌のような胃腸関連の菌とも完全に無関係とは言い切れないようなので、今回はピロリ菌と酒さの関係をまとめてみました。

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酒さとピロリ菌

酒さに関していえば、ピロリ菌は酒さの原因の一つとして考えることもあれば、単体での影響を否定する見解もあるようです。

アクネ菌や毛包虫、ピロリ菌などの酒皶への関与は肯定的結果と否定的結果が入り混じり結論は出ていません。
現時点でいえることは外界の環境や微生物は何らかの関与はするが、それ単独で酒皶の病態を引き起こすものではないということです。

引用:そが皮膚科 – 酒さ(2)病因・病態

ただ、直接の原因とはなっていなくても、ピロリ菌が免疫機能に影響を与え、それが酒さの憎悪(状態が悪くなること)に繋がっているという見解もあるようです。

酒皶の病因は不明ですが、その皮膚面にはアクネ菌(にきび菌)や表皮ブドウ球菌や毛包虫がみられます。またピロリ菌やHIVの感染患者に酒皶がみられることなどから外界の環境や微生物が何らかの関与をしているのは確かそうです。そして、これらは自然免疫機構に影響を与えます。

引用:そが皮膚科 – 酒さとピロリ菌

免疫異常は肌だけでなく身体の多くの影響を及ぼしますし、酒さへの影響も大きく指摘されています。

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酒さ治療とピロリ菌除去の関係

ピロリ菌が酒さに及ぼす影響は1990年代から指摘されているようで「酒さ患者さんはピロリ菌を持っている確率が高い」などと言われています。

酒さ治療を全面に押し出している渋谷セントラルクリニックさんでは、酒さの原因の一つとしてピロリ菌もあり得ると考えているようで、酒さ治療の一環としてピロリ菌の除菌もおこなっているようです。

酒さの患者さんでは、ピロリ菌から放出されるサイトカインが光線過敏症を引き起こし、日光に曝露した部位に赤みを生じさせ、酒さを再発させたり、悪化させたりします。

実際、尿素呼気テストにおいてピロリ菌陽性と診断された酒さの患者さんが、ピロリ菌の除菌によって、96%の人で酒さの症状の改善を認めています。

当院では、ヘリコバクター・ピロリの感染の有無を調べる検査を行い、ピロリ菌陽性の場合、除菌療法を行っております。

引用:渋谷セントラルクリニック – 酒さとピロリ菌

ちょっと難しいですけれど、サイトカインというのは細胞の増殖や分化といった情報伝達を行うたんぱく質で、免疫系統に大きく関係しています。

炎症とのかかわりも大きく、炎症を促進する働きを持つものもあり、炎症性サイトカインと呼ばれています。

ピロリ菌は胃に炎症を起こしますが、炎症要因であるサイトカインが光線過敏症(日光に弱いこと)も引き起こします。結果として肌が光に弱くなり、ちょっとした紫外線でも酒さ症状を発症させたり悪化させたりということに繋がります。

ピロリ菌が酒さの直接の原因、というよりもピロリ菌が引き起こす作用が間接的に酒さの原因にもなり得る、という形ですね。

酒さのサブタイプによるピロリ菌保有率

全米酒さ協会の記事によると、酒さのサブタイプによってもピロリ菌の保有率が違う、と英国の医学誌に掲載されていたようです。

In the study of 49 rosacea patients, 46 percent who had subtype 2 rosacea tested positive on a breath test for the presence of H. pylori. This compared with only 25 percent of the patients with subtype 1 rosacea, characterized by redness and sometimes visible blood vessels.

引用:全米酒さ協会 – H. pylori Linked to Inflammation

49人の酒さ患者さんを調査したところ、サブタイプ2の酒さ患者さん(丘疹膿疱タイプ)は46%の人がピロリ菌保有者だったのに対し、サブタイプ1(毛細血管拡張タイプ)の患者さんのピロリ菌保有率はわずか25%だったとのこと。

明らかに違いますね。

酒さにも丘疹膿疱タイプ(ブツブツタイプ)と毛細血管拡張タイプ(赤ら顔タイプ)があり、両方の症状がある場合も多いので一概には分類しきれないと思います。

それでも、ブツブツが多いタイプの場合はピロリ菌との関連性を疑ってみてもいいかもしれません。

日本人のピロリ菌感染率

但し、日本人のピロリ菌感染率はアメリカのものと違いますし、同じ日本人でも若い人の感染率は低いという統計があります。こういったデータがあるからといってブツブツタイプの酒さ=ピロリ菌と直結できるほど単純なものでもありませんので、そこは頭に入れておきましょう。

日本人のピロリ菌感染率は、50代以上で80%程度、10~20代では20%前後、と大きく違っています。

整備されていない上下水道や井戸水などを飲んでいた世代は感染しやすく、現在の整った上下水道で育った若い世代の感染率は低いようです。

ピロリ菌と赤ら顔の研究

少し前まで、ピロリ菌の産生する『ガストリン』という成分が顔の紅潮(赤み)の原因ではないかと疑われていたようです。

これは消化管ホルモンの一種で、紅潮(フラッシング)を引き起こす可能性があるようです。

但し、最近の研究では酒さ患者とそうでない人とのピロリ菌保有率に明らかな違いはないとされており、ピロリ菌と酒さの直接的な関係には否定的な研究もあります。

ただ、酒さ患者の多くが消化不良などの胃腸障害を訴えており、ピロリ菌感染とは無関係に胃腸機能と酒さの関係も研究されています。

結局のところ、ピロリ菌は紅潮を引き起こすホルモンのガストリンを合成するため、酒さ発症の原因とはならなくても、現在の酒さ症状や炎症を悪化させる要因にはなり得る、という見解のようです。

Limited studies have suggested that a bacterium commonly associated with peptic ulcers and other gastric disorders, called Helicobacter pylori, may play a role in triggering rosacea in some patients.

(中略)

He noted, however, that a third study showed no difference in the presence of H. pylori between rosacea patients and those without the condition.

How might H. pylori affect rosacea? The association is unclear, as the bacterium has also been found in up to 80 percent of all individuals over 50.

“It’s possible there is a vascular link,” Dr. Odom said. “H. pylori synthesizes gastrin, a hormone that causes flushing, so it makes sense to add it to the list of potential flare-up triggers in those who already have rosacea.”

引用:全米酒さ協会 – H. pylori Might or Might Not Trigger Rosacea

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が一部の酒さ患者のトリガー(悪化要素)となる可能性がある事が限られた研究によって明らかになった。

しかしながら、別の研究では酒さ患者とそうでない患者でピロリ菌保有率に差異がないという研究結果が出ている。

ピロリ菌は50歳以上の80%にまで発見されているため、酒さとの明らかな関係性は不明である。

このような前提を踏まえた上でオドム博士(カリフォルニア大学皮膚科学科)は、「ピロリ菌は酒さにどのような影響を及ぼしますか?」という問いに対し、

「毛細血管との関係性があり得る。ピロリ菌は紅潮(フラッシング)を引き起こすホルモンであるガストリンを合成するため、既に酒さ症状を持っている患者の悪化要素(炎症トリガー)になるであろう」と語っている。

こちらでは赤ら顔タイプ(毛細血管拡張タイプ)の酒さ患者さんに対しても、悪化要因になり得るとの見解が出ています。

無理やり一言でまとめると

ピロリ菌は酒さの直接的な原因ではないにしろ、ピロリ菌がのぼせやほてりを促進するホルモンが分泌するから悪化しやすくなるよ

といったところでしょうか。

ピロリ菌と肌の炎症

ピロリ菌が酒さに直接の影響を与えているかどうかは、見解の分かれるところです。

ピロリ菌が付着した場所には免疫細胞が集まり、ピロリ菌を除菌しようと攻撃をするため炎症を起こします。

また、ピロリ菌自体も胃粘膜を攻撃する炎症性の物質を放出しています。

通常はこの炎症性物質が胃の粘膜を攻撃するため、ピロリ菌と胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などとの関係が指摘されます。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の場合はピロリ菌の除菌によって症状の軽快や再発頻度の低下がみられることから、胃や十二指腸との関係は明らかです。

ところが、肌の炎症とピロリ菌の関係に関しては、直接的な関連があるかどうかは不明です。

ピロリ菌は炎症性の物質を生産していますので、既にある肌の炎症を促進させるということはあり得ます。

また、ピロリ菌が産生する毒素が血管を通して全身にいきわたり、蕁麻疹のような症状を引き起こすことも知られています。蕁麻疹も、ピロリ菌との影響があるのではないかと検証されている疾患の一つです。

ただこちらも確定的ではなく検証段階にあるものですが、皮膚疾患と消化管や腸内環境の関連性は多くのところで示唆されています。

現在のところ、胃潰瘍などのようにピロリ菌が直接的な原因になる、というよりはピロリ菌の影響によって肌の炎症も起きやすくなる、という程度の認識に留まっています。

ピロリ菌を除菌したら蕁麻疹や肌荒れなどの皮膚疾患も良くなった、という人は多くいますが、肌の炎症があるからピロリ菌を除菌しよう、とまでは考えにくいのが実情です。

ピロリ菌が引き起こす栄養障害

ピロリ菌は胃の中に住み着き、胃の粘膜を攻撃します。

胃の中は強力な酸性に傾いていて通常の菌は生息できませんが、ピロリ菌はこの胃酸を中和する酵素を出しているため胃酸の中でも生息できます。

胃は胃酸から自分を守るために粘膜で覆われていますが、ピロリ菌はこの粘膜を攻撃するため胃粘膜の防御機能が低下し、栄養の吸収も阻害されます。

胃腸障害や肝機能による栄養障害は直接的な酒さの原因にはならなくても、酒さの悪化要因であることは確かです。

肌に限らず身体にいきわたる栄養が足りていなければ、その機能は衰えていきます。

ピロリ菌による栄養障害や消化不良などが原因で肌に栄養が行きわたらず、結果的に酒さのような肌荒れや赤ら顔を引き起こすこともあり得ます。

酒さの悪化要素には胃腸関連のものも多い

酒さの悪化要素と言われているものの中には、胃腸関連のものも多くあります。

  • 冷たすぎる食品を食べたり飲んだりしないこと
  • 香辛料の強すぎるものを摂らないこと
  • 暴飲暴食を避けること

などの注意点は、胃腸に大きな負担をかけないよう配慮したものでもあります。

直接的な原因こそ不明ではあるものの、胃腸関連の不調があると酒さやニキビが悪化する、というのは多くの患者さんが経験していることでもあります。

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まとめ

ピロリ菌のような胃腸障害と皮膚疾患は少なくない関係性があるとも言われますが、酒さに関しては直接の原因になるというようなはっきりした研究はないようです。

ただ、直接的な原因としては否定的であっても、間接的な要因にはなり得る、とか、悪化要素にはなり得る、などとする記述が目立ち、全くの無関係と断定しきることもできないようです。

結局のところ酒さの原因は個人の体質にも大きく左右されますから、自分の酒さや赤ら顔がピロリ菌でひどくなっているかどうか、というのは自分にしか当てはまらないのかもしれません。

私自身は、ピロリ菌除菌薬のおかげで肌の調子が良くなっている最中ですが、そろそろ抗生剤の影響が抜けてくる頃だと思うので本来の肌状態に戻ってくるはずです。

除菌結果もまだ分かりませんしこの後肌の調子がどのようになるかも不明ですので、私の酒さにピロリ菌がどのような影響を及ぼしているかも全く不明です。

現在のところ胃の調子が良くなったり食欲が湧いてきたりなどといった変化は全くないので、除菌には失敗しているんじゃないかと思っています。先生が2次除菌まではできる、とおっしゃってたので、今回失敗していたとしてもせめて2次除菌では成功したいですね。

除菌ついでに肌の調子が少しでも良くなってくれればありがたいですが、過度な期待はもたないようにしておきたいと思います。

追記:ピロリ菌除菌判定行いました!

ピロリ菌除菌の結果と私の酒さへの影響。皮膚疾患にピロリ菌はどこまで影響するか。
以前に行ったピロリ菌の除菌判定を行ってきました。 手術で除菌判定が伸びてしまったので、本来の予定よりも2週間ちょっと遅れての除菌判定です。...

自宅でピロリ菌の検査を行えるキットもありますが、最終的に除菌を考えるならまずは病院に行きましょう

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